不動産契約、住宅ローン、融資などの契約の際に、保証人や連帯保証人が必要となるケースがあります。しかし、「連帯保証人と保証人はどう違う?」と疑問に思う人は少なくありません。
保証人と連帯保証人は大きな違いがあるため、この違いを理解していなければ後悔する可能性があるでしょう。
本記事では、保証人と連帯保証人の違いと、後悔しないために知っておくべき知識を解説します。
連帯保証契約を結ぶ際の参考になるため、ぜひ最後までご覧ください。
CONTENTS
保証人と連帯保証人は何が違う?
保証人と連帯保証人の共通項は、主債務者(実際にお金を借りた人)がお金を返せなかった際に、代理として返済する義務(保証債務)を負う点です。
しかし、保証人は主債務者の差押え後に代理して返済する立場であるのに対し、連帯保証人は主債務者と同じ立場に立ちます。
具体的な違いは、以下の3点です。
- 分別の利益
- 検索の抗弁権の有無
- 催告の抗弁権の有無
詳細を見ていきましょう。
関連記事:連帯保証人と保証人の違いは知らないと危険!知っておくべき責任の差
分別の利益
分別の利益とは、債務者の保証人が複数人いる場合、債務者の返済額を保証人の人数で割った金額を支払えば良いとする権利です。
主債務者の保証人が複数人いる場合、主債務者が返金しなければいけない額を保証人の人数で割った額が保証人1人あたりの返済額です。保証人複数人で主債務者が返金しなければいけない額を割ることを、分別の利益と呼びます。
しかし、連帯保証人はこの分別の利益がありません。つまり、連帯保証人が複数人いたとしても、それぞれが主債務者が返金しなければいけない額を支払う必要があります。
主債務者の返済額が500万円だった場合、保証人が2人いれば、1人あたり250万円の返金義務を負います。連帯保証人が2人いる場合は、それぞれが500万円を支払う義務を負います。
参考:e-Gov「施行日:令和五年六月十四日」(民法第456条)
検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、債務者に債務の履行が可能であることを証明できれば、保証債務を保証人が拒否できる権利です。
主債務者への催告(債務の履行の催促)をしたうえで債務の履行がない場合、保証人の財産の差押えが可能です。しかし、保証人が主債務者の債務の履行が可能であり差押えが容易であることを証明できれば、保証人の財産差押えを防げます。
例えば、「債務者は預金がある」と証明できればその預金から取り立てが始まります。
しかし、連帯保証人は検索の抗弁権がありません。たとえ、主債務者に能力があったとしても拒否ができないため、差押えられます。
参考:e-Gov「施行日:令和五年六月十四日」(民法第453条)
催告の抗弁権の有無
催告の抗弁権とは、主債務者の保証人が債権者(お金を貸した人)から債務履行を請求された際、先に債務者に対して請求するよう主張できる権利です。主債務者が行方不明になったり自己破産したりしているケースでは、催告の抗弁権は消滅します。
連帯保証人には、催告の抗弁権がありません。
しかし、債権者は主債務者に対して1度でも催告すれば良いため、効力は極めて弱いといえます。催告の抗弁権と検索の抗弁権は似ていますが、成立条件や効力の強さが異なるため注意が必要です。
参考:e-Gov「施行日:令和五年六月十四日」(民法第452条)
連帯保証人となる条件は?
連帯保証人の条件は、各企業により異なります。基本的には、返済能力がある人が共通項です。以下の条件を提示している企業が多い傾向にあります。
- 安定した収入、返済能力がある
- クレジットカードや借金返済などに関する滞納歴がない
- 3等身以内かつ高齢ではない親族(65歳程度)
- 日本国内に住んでいる
- 連帯保証人になることを了承している
貸金業者、銀行などにより条件の傾向が異なるので注意が必要です。連帯保証人になる場合には、本人確認書類、収入証明書、財産証明書を債権者に提示する必要があります。
主債務者が自己破産した場合に連帯保証人はどうなる?
主債務者が自己破産した場合は、債権者から保証債務のある者(連帯保証人、保証人)に対して借金金額の請求がされます。主債務者は自己破産手続きにより支払いを免れる場合もありますが、保証債務のある連帯保証人、保証人の義務はなくなりません。
自己破産手続きは、債務履行を免除される代わりに高価な財産をお金に換えて債権者に配当する手続きを指します。
自己破産手続きを完了した時点で、主債務者の支払い能力がないため催告の抗弁権、検索の抗弁権は失われます。
ただし、保証人であれば分別の利益の権利は使えるため、保証人が複数人いる場合は返済額が減る可能性があるでしょう。
連帯保証人を辞めたい時はどうすればいい?
原則、連帯保証人は当事者一方の都合で解除したり、無効にしたりすることはできません。しかし、以下の2つのケースに限り、連帯保証人を辞められる可能性があります。
- 債権者と合意すれば辞められる
- 無断で連帯保証人にされた場合は無効
詳細を見ていきましょう。
債権者と合意すれば辞められる
連帯保証人の解除の条件として、債権者の合意があれば契約を解除できます。しかし連帯保証契約の効力は強力であること、連帯保証契約の解除は連帯保証人にとって有利であり債権者にとっては不利であることから、合意を得ることは困難です。
債権者の合意を得るためには、代わりの連帯保証人をたてるなどの方法は考えられます。しかし、信頼できる人でなければ連帯保証人になれません。
主債務者の親族であったり、元の連帯保証人よりも資産や信用を有していたりと、条件は厳しくなります。ただし、債権者の合意を得られたとしても解除時点で発生している家賃は基本的に支払わなければいけません。
連帯保証人を解除したい場合、各業界に詳しい弁護士への相談も視野に入れることがおすすめです。
無断で連帯保証人にされた場合は無効
無断で連帯保証契約を結ばれていた場合は契約の不成立を主張でき、主債務者にだまされて連帯保証契約を結んだ場合(詐欺・脅迫)は契約の取消しの主張ができます。
また、錯誤により契約を結んだ場合や、信義誠実の原則に反した際も、契約を取り消せる可能性があるため確認が必要です。
なお、信義誠実の原則とは、例えば不動産オーナーが故意に滞納金を増やし回収することなどを指します。
連帯保証人契約を無効化できるか否かは、一度弁護士に相談することがおすすめです。
連帯保証人について注意したいポイント
連帯保証人に関して注意したいポイントは、以下の2つです。
- 連帯保証人がなくなった場合は相続される
- >離婚しても連帯保証人のまま
詳細を見ていきましょう。
連帯保証人がなくなった場合は相続される
連帯保証人が死亡した場合は、遺族に対して法定相続分と同じだけ相続されます。
つまり、1000万円の負債がある連帯保証人が死亡した場合、配偶者に1/2である500万円が、子供が2人いる場合は子供1人につき1/4である250万円の負債が相続されます。
子供の1人が相続放棄(資産も負債も承継しないこと)をした場合はもう片方の子供が500万円、子供2人が相続放棄した場合は、配偶者が全額負担することになることが基本です。なお、連帯保証人が死亡しても、連帯保証債務は残ります。
負債について遺族間で遺産分割協議を行い、相続人の特定の1人に承継させたとしても、債権者に対して主張できません。負債の遺産分割協議をする場合は、債権者に承諾を得る必要があります。早い段階で、弁護士に相談することがおすすめです。
離婚しても連帯保証人のまま
離婚が原因で、連帯保証契約が解除されることはありません。離婚して連帯保証契約が解除される場合、債権者が不利になるためです。
例えば夫が住宅ローンを組んだ際に妻が連帯保証人になった場合、離婚しても連帯保証契約は継続したままです。連帯保証契約を結ぶ際は、離婚の可能性も視野に入れて行動をすることが必要といえます。
関連記事:熟年離婚後、年金はどう分割される?年金分割制度でいくら手に入るのか解説
まとめ:後悔しないように違いを理解しておこう
保証人と連帯保証人は、与えられている権利や保証義務の範囲が異なります。原則、保証人は債権者に対していくつかの権利を主張できます。しかし連帯保証人は、主債務者と同じ立場にあるため保証人に与えられている権利は主張できません。
連帯保証契約を結ぶ際は、将来のことや、万が一自身が死亡した際の遺族のことも考えることが重要です。