「世帯年収1000万円あれば余裕ある暮らしができる?」
年収1000万円あれば楽な生活ができると期待が膨らみます。頑張って世帯年収1000万円を達成したのに、生活が苦しくなったら元も子もありません。
結論から言うと、世帯年収1000万円は手取りは増えますが、支出も多くなります。なぜなら、年収1000万円は高収入と分類され、国や自治体からの経済支援の対象外になるためです。
ここでは、世帯年収1000万円の現状とともに、特有のデメリットや家計維持に必要な考慮事項を順番にお伝えします。この記事を読み終わるころには、世帯年収1000万を達成したにも関わらず苦しい家計状況にならぬよう、今から備えを進める必要性を理解できます。
CONTENTS
世帯年収1000万の割合は?政府のデータを確認
世帯年収が1000万円を超える世帯は、日本全体でどの程度いるのでしょうか。
2022年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、日本全体の世帯の12.6%が世帯年収1000万を超えていると報告されています。世帯年収の平均値が552.3万円であり、年収の低い方から数えて全世帯数の中間に位置する中央値だと437万円です。
となると、平均値や中央値の収入の世帯から見れば、世帯年収1000万円は約2倍の収入を得ていることになります。つまり、世帯年収1000万は数値上は、高収入世帯と言えます。
世帯年収1000万の税金や手取りはどうなる?
世帯年収1000万円の場合、税金額や手取り金額は、同じ世帯構成で、世帯年収の平均値もしくは中央値の世帯と比べて単純に2倍なのでしょうか。結論、年収1000万円世帯の税金額が平均年収世帯の2倍以上になるため、手取り金額は2倍未満になります。
なぜなら、一部の税金の税率が収入額によって、大きくなるように設定されているためです。そのため、世帯年収が2倍になったとしても、家計の余裕度が2倍になるわけではありません。
年収と手取りは何が違う?
年収と手取りの関係は、「年収ー税金=手取り」の式で表せます。会社員の場合、年収は基本給に加えて、各種手当やボーナスが合算された金額です。一方、手取りは年収から各種税金の支払額を差し引いた金額、言い換えると実際に給与口座に振り込まれる金額です。
年収から差し引かれる税金は原則4種類あります。
年収から引かれる4つの税金:
- 所得税
- 社会保険料
- 雇用保険料
- 住民税
それぞれの税金が年収からどの程度差し引かれているかが分かると、手取り金額に及ぼすインパクトの大きさを実感できます。
1.所得税
所得税は、個人の年収に対して既定の税率を乗じて算出され、所得税率は年収が多くなるに従い段階的に大きくなる仕組みになっています。具体的には、最も低い税率は5%ですが、最高だと45%まで上がります。
そのため、年収が上がると所得税率が上がり所得税額が大きくなるため、年収が2倍になっても手取りは単純に2倍にはなりません。
2.社会保険料
社会保険料は、生活の中でのケガや病気により困った状況になっても、国や自治体から金銭的な支援を得るために必要な税金です。具体的には、3つの保険料の合算です。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料(40歳以上が対象)
会社員の場合、社会保険料は雇用主と折半のため、年収に対する社会保険料の比率はおよそ15%です。
3.雇用保険料
雇用保険料は、失業や休業した際に給付金を受給するために必要な掛け金を指します。労働者側の支払金額は賃金に対して、雇用保険料率は0.6%です。
なお、雇用保険料率をかけ合わせる賃金には通勤手当も含まれます。
4.住民税
住民税は、その年の1月1日に住所がある都道府県と市町村に支払う税金です。住民税は2種類で構成されています。
- 均等割:一定以上の年収のある人に定額を課税
- 所得割:年収・所得金額に応じて課税
なお、所得割は、所得税と異なり税率は10%と一律です。世帯年収1000万円を超えると、税金額も大きくなり手取りに左右するため、給与明細などで差し引かれている金額を確認しましょう。
世帯年収1000万円の中でも手取りに差がある
世帯年収が同じ1000万円でも、片働きと共働きだと手取りは変わるのでしょうか。
片働きで年収1000万円よりも、共働きで世帯年収1000万円の方が手取り額が多くなる場合があります。手取り額に違いが発生する主な原因は、収入から差し引かれる税金は働き手単位で計算されるためです。
例えば、共働き世帯で1人あたり500万円の収入があるケースで考えると、単身で年収1000万円の世帯よりも手取りが50万円ほど多くなります。手取りの差は所得税の違いが主因であり、この事実から同じ世帯年収なら1人で稼ぐよりも2人で稼ぐ方が、手取り増加に繋がりやすいことがわかります。
年収1,000万円 | 年収500万円 | |
---|---|---|
所得税 | 約88万円 | 約14万円 |
住民税 | 約66万円 | 約25万円 |
厚生年金 | 約71万円 | 約48万円 |
健康保険 | 約49万円 | 約26万円 |
雇用保険 | 約3万円 | 約1万5千円 |
手取り | 約742万円 | 約395万円 |
但し、世帯構成により様々な所得控除が適用され、課税所得が減ると税金額も変わるため、共働きが手取りを増やす方法とは一概には言いきれません。整理すると、世帯年収1000万円でも、世帯構成や稼ぎ手の人数により手取りは数十万単位で変わる可能性があります。
世帯年収1000万円を超えることで起こる影響をチェック
世帯年収1000万円を超えて、高年収世帯と見なされるようになることで、年収以外の要素で家計に対する影響はあるのでしょうか。世帯年収1000万円を超えると、子育てに関する支援制度を受けられなくなる可能性が非常に高いです。
国や自治体による子育て関連支援制度では、高い年収・所得の世帯は対象から外れるようになっているためです。具体的に、世帯年収1000万円を超えることでマイナス影響が発生する事項は2つあります。
子どもの年齢や進学状態が支援制度の対象ならば、支援を受けられる条件を満たせるのか細かく確認しましょう。
世帯年収1000万円を超えることで起こる影響:
- 児童手当が受けられなくなる
- 高等学校等就学支援が受けられなくなる
児童手当が受けられなくなる
世帯年収が1000万円を超えると、児童手当の対象から外れる可能性が高まります。児童手当は、一定以上の所得金額の世帯は支給対象から外れる制度設計であるためです。
児童手当の支給は、年収ではなく、年収から税金や各種控除額を差し引いた所得額で決まります。そのため、世帯年収が1000万円を超えていても支給対象になりえますが、満額支給されない可能性が高いです。
よって、世帯年収が1000万円を超えるならば、児童手当が支給されない前提で家計のやりくりが必要です。
高等学校等就学支援が受けられなくなる
世帯年収が1000万円を超えると、高校の授業費軽減のための高等学校等就学支援金制度の適用外になる可能性が極めて高いです。高等学校等就学支援金制度では、世帯年収が1000万円前後だと所得要件を満たせなくなるためです。
高等学校等就学支援金制度で年間最高額の39.6万円を支給してもらうためには世帯年収が740万円未満、基本の約11.8万円は1090万円未満が目安です。但し、実際の判定は所得額を用いて行われるため、1000万円以上でも支援対象になれる場合もあります。
そのため、子どもが高校に進学している世帯年収が1000万円以上の家庭でも、自治体に適用対象に入るかの確認をおすすめします。
世帯収入1000万円でも貯金がない?チェックリストで確認
世帯収入が1000万円あれば、世帯の貯蓄はスムーズに進むのでしょうか。世帯収入1000万円だからと言っても、思うように貯蓄が進まない場合があります。
貯蓄が進みにくい世帯に共通する原因は、支出額が高止まりしていることです。実際、貯蓄に関する調査では、世帯収入1000万円の内、全体の8%は貯蓄額が100万円未満であると報告されています。
参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果」
支出額が増えやすい典型的なケースは3つあげられます。貯蓄が進みにくくなる原因を予め把握しておき、貯蓄できない状況に陥らないようにしましょう。
貯蓄が増えない理由:
- 高級品を購入している
- 住宅ローンの返済額が多い
- 私立学校などの養育費が高い
高級品を購入している
収入が増えて、買い控えていた高額品を購入・保有したことで、変動費もしくは固定費が増えて、経済的余裕が減ってしまっている場合があります。
例えば、自家用車を購入した場合、購入前と比較すると固定費が増加します。具体的には、自動車ローンの返済額に加えて、駐車場料金やガソリン代、保険費用が発生し、年次で発生する自動車税も無視できません。
結果として関連費用を合計すると、家賃相当になる場合もあります。高級品の購入を検討している場合には、維持費用も含めて支出の増額幅を整理して、貯蓄の原資を確保できる範囲で収まるか見極めましょう。
住宅ローンの返済額が多い
希望する間取りを優先して新居を選ぶと、住宅購入価格が高騰し、結果的に住宅ローンの返済額も増えてしまいます。直近10年間で住宅の平米単価は1.5倍になっているためです。
参考:不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2022 年」●担当者に確認中(リンク先)●
住宅ローンの返済額はローンの対象額やローン金利によって決まります。そのため、すでに住宅ローンを利用している場合には、より低い金利のローンへの乗り換えが返済額の抑制に効果的です。
一方、これから購入予定の場合は、まず購入する住宅の間取りや立地を見直して購入価格を押さえ、かつ頭金も可能範囲で払えば、返済額を抑制できます。返済可能な月額から逆算して購入価格を算出し、その金額を予算条件に設定し物件購入して無理ない家計状況にする方法も有効です。
住宅ローンは返済期間が長期間にわたることから、将来的にも確実に支払える金額に抑えるのが、貯蓄できる家計を保つポイントです。
私立学校などの養育費が高い
公立学校と比較すると、私立学校に通学する場合に必要な教育費は2~4倍かかります。世帯年収が1000万円を超えたとしても、手取りが劇的に増えない点は前述の通りです。
一方で、子どもがいれば教育費や養育費はかかるため、手取りや貯蓄から捻出できるようにしなければなりません。そのため、将来、子どもを教育費が高い私立に通わせたいと考えるならば、学費がかからない時期に予め学費用貯蓄を進めておくことをおすすめします。
子どもの可能性を狭めないようにするためにも、養育費の財源を本格的に支払が始まる前にある程度確保するようにしましょう。
世帯年収1000万が貯蓄を増やすには?
貯蓄が進みにくい世帯でも効率的にお金を貯めるには、どのような方法があるのでしょうか。収入を得ると同時に一部を貯蓄に回し、生活レベルを必要以上に上げないようにすれば、確実に貯蓄は進められます。
すぐに取り組めて誰でもできる再現性の高い方法は以下の3つです。
- 貯蓄の目標金額を決める
- 先取り貯蓄・積立投資を活用する
- 固定費を中心に過度な費用を見直す
そもそも貯蓄自体は手段であるため、世帯全体で貯蓄理由や具体的な目標額を決められると、家族全員で貯蓄に取り組みやすくなります。また、自動的に一定額を貯蓄に回すようにできると、貯蓄済みの予算内で支出の工夫が必要になり、支出自体の見直しも捗ります。
予め貯蓄する前提のお金の流れにすれば、支出を絞って貯蓄の原資を捻出しなくても自然と貯蓄額を増やせます。貯蓄額をより効率的に増やしたい場合には、税優遇制度のあるNISAを活用しながらコツコツ資産運用するのもおすすめです。
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まとめ:生活を見直して世帯年収に対するデメリットを最小限に抑えよう
この記事では、世帯年収1000万円の手取り比較とともに、1000万円で生じるデメリットや貯蓄を妨げる原因を紹介しました。
- 同じ世帯年収1000万円でも稼ぎ手が1人よりも2人だと税金総額を抑制できて、手取りが増える可能性が高い
- 世帯年収1000万円を超えると、子育てに関する公的な支援制度の対象外になりやすい
- 世帯年収1000万円とは言え、高額出費を重ねれば、貯蓄は進みにくい
世帯年収1000万円は、高収入世帯の目安と捉えられやすいですが、決してお金を湯水のように使える訳ではありません。むしろ税金額が増えるため、収入に対する手取りの比率は下がり、子育て支援制度も適用外になり支出が増えるため、家計の余裕は限られます。
しかし、平均年収世帯よりも手取りは多いのは事実のため、将来への貯蓄をしつつ生活水準を極度に上げなければ、年数回の旅行や外食を楽しめます。世帯年収1000万円特有のデメリットへの対策を早めに講じて、苦しい家計にならぬように備えを進めましょう。