「せっかく夫婦共働きしても、税金が高くなるだけで実際は損なの?」
「税金で損せずに手取り収入を得るには、いくらを基準に働けばいい?」
このような悩みを抱えていませんか?
現在では、専業主婦世帯よりも共働き世帯の数が増えており、2022年には共働き世帯は全体の70%を占めます。しかし、税金面での年収の基準がわからないまま働いている人も多いでしょう。制度を正しく理解して働かなければ税金の負担が増えてしまい、かえって手取り収入が減ってしまう恐れがあります。
そこで今回は「共働きの税金面でのメリット・デメリット」「夫婦共働き世帯の税金対策」についてご紹介。夫婦共働きの際に得をするために注意すべき年収も具体的に解説します。この記事を読めば賢い働き方を実現できるでしょう。
CONTENTS
共働き夫婦が片働きより税金面で有利になる3つのメリット
夫婦共働きと片働きではどちらが税金面で得をするのでしょうか。まずは、共働き夫婦が片働きより税金面で有利になるメリットについてみていきましょう。共働きの税金面でのメリットは、以下の3つです。
共働きの税金面でのメリット:
- 年収103万円までは配偶者控除が受けられる
- 年収106万円または130万円までは社会保険料がかからない
- 共働きなら所得が分散できるため税金が抑えられる
夫婦共働きをする場合、年収103万円・106万円・130万円はそれぞれ年収の壁として意識する必要があります。なぜなら、壁となる金額を超えてしまうと、住民税・所得税・社会保険料に影響が出るからです。それぞれ詳しくみていきましょう。
①年収103万円までは配偶者控除が受けられる
共働きの税金面でのメリット1つ目は、一方の年収が103万円までなら配偶者控除が受けられることです。
パート収入が103万円以下でほかに所得がなければ、その方に所得税及び復興特別所得税はかからず、また、その方の配偶者は配偶者控除を受けることができます。
国税庁「家族と税」
所得税額は、1月〜12月の1年間の収入から算出します。所得控除額55万円を差し引いた額が基礎控除額48万円以内なら、本人に所得税はかからず配偶者が配偶者控除を受けられます。配偶者控除は最大38万円で、控除を受ける本人の所得により減少します。
年収103万円を超えると配偶者控除の対象からは外れますが、配偶者特別控除の対象になります。年収201万円になるまでは、所得に応じた控除が受けられます。
関連記事:妻は夫の扶養に入るべき?社会保険・税制上の扶養に入れるメリットや年収の壁、手続き方法を徹底解説!
②年収106万円または130万円までは社会保険料がかからない
共働きの税金面でのメリット2つ目は、年収106万円または130万円までは社会保険料がかからないことです。年収106万円・130万円までなら、配偶者の健康保険・厚生年金に第3号被保険者として加入しているため、社会保険料を納める必要はありません。
短時間労働者の社会保険制度上の適用区分は、各自の働き方(労働時間及び収入)や扶養者の有無によって異なっており、いわゆる「年収の壁」はこの適用区分に起因する。具体的には、第3号被保険者が第1号被保険者に移動する際にいわゆる「130万円の壁」、第2号被保険者(短時間被保険者)に移動する際にいわゆる「106万円の壁」が生じる。
厚生労働省「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」
年収106万円を超えると、企業規模・月収・勤務時間によっては社会保険の加入対象になります。企業規模は、従業員数101人以上(2024年10月〜従業員数51人以上)です。適用条件に合致した場合、夫の社会保険上の扶養から外れ、自分で社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する必要があります。
また、年収130万円を超えると106万円の壁に該当しなかった人も含めてすべての人が、社会保険の扶養から外れます。パート先の社会保険に加入しない場合は、自分で国民健康保険と国民年金を納めなければなりません。
関連記事:年金定期便の見方は?毎月いくらもらえるかの計算方法と確認ポイントを解説
③共働きなら所得が分散できるため税金が抑えられる
共働きの税金面でのメリット3つ目は、共働きなら所得が分散できるため税金が抑えられることです。日本は、年収が高くなれば所得税率が高くなる超過累進税率方式を採用しています。納税者の支払い能力に応じて税負担の公平性を満たすために導入されました。
そのため、1人に所得が集中するよりも、2人で稼いで所得を分散させ所得控除を2人分以上受けると節税できる可能性があります。同じ年収の場合、共働き世帯は片働き世帯よりも税金面で優遇されているため、手取り収入が多くなると理解しておきましょう。
関連記事:共働きは税金で損か得かシミュレーション!共働きのメリットと税金対策
共働き夫婦世帯の年収が増えると起こり得る3つのデメリット
共働き夫婦が片働きより税金面で有利になることがわかりました。ここからは、共働き夫婦世帯の年収が増えると起こり得るデメリットを解説します。共働き世帯の年収が増えるデメリットは、以下の3つです。
共働き世帯の年収が増えるデメリット:
- 年収が増えると税率が上がるため損をする
- 児童手当の支給額が減少して損をする
- 高等学校等就学支援金制度が受けられなくて損をする
共働き世帯で世帯年収が増えた場合には、年収が増えたことで税金がどれくらい上がったか把握しておく必要があります。年収のうち2〜3割は、所得税・住民税・社会保険料が占めていると認識しておきましょう。公的支援の恩恵を受けられなくなる場合もあるため、気をつけなければなりません。
①年収が増えると税率が上がるため損をする
共働き世帯の年収が増えるデメリット1つ目は、年収が増えると税率が上がるため損をすることです。所得税は、年収が高くなるほど税率も上がる超過累進税率方式で計算します。
基礎控除や給与所得控除などの各種控除を考慮した手取り割合は、年収が上がると減少してしまうため気をつけなければなりません。累進課税は公正な納税や所得格差是正などにつながる一方、労働意欲を阻害する面も併せ持っています。
②児童手当の支給額が減少して損をする
共働き世帯の年収が増えるデメリット2つ目は、児童手当の支給額が減少して損をすることです。児童手当は出産後すぐにもらえる制度であり、補助金額の目安は3歳未満で月15,000円。中学卒業までで、月10,000円です。0歳〜中学卒業までの合計支給額は、約200万円にも上ります。
しかし、以下のように児童手当には、扶養親族等の人数に応じて所得制限限度額が設定されています。
扶養親族等の人数 | 所得制限限度額 | 年収額の目安 |
---|---|---|
0人 | 622万円 | 833.3万円 |
1人 | 660万円 | 875.6万円 |
2人 | 698万円 | 917.8万円 |
3人 | 736万円 | 960万円 |
4人 | 774万円 | 1,002万円 |
5人 | 812万円 | 1,040万円 |
参照元:内閣府「児童手当制度のご案内」
例えば、配偶者と子ども2人を扶養している片働きを想定してみましょう。各種控除を考慮していないため目安となりますが、夫婦どちらかの収入が年収960万円以上の場合、月額5,000円に減額されます。2022年10月以降は、目安年収1,200万円以上の場合、児童手当の支給はありません。
③高等学校等就学支援金制度が受けられなくて損をする
共働き世帯の年収が増えるデメリット3つ目は、高等学校等就学支援金制度が受けられなくて損をすることです。国公私立を問わず高等学校等の授業料に充てるための支援金が支給され、高校の授業料は実質無償になります。
支給額は、公立高校の場合は年間約12万円。私立高校の場合、最大で年間約40万円です。ただし、所得制限がある点に注意しましょう。両親共働きの場合の所得基準に相当する目安年収は、以下のとおりです。
子の数 | 11万8,800円の支給(月額9900円)の対象になる年収目安 | 39万6,000円の支給(月額33,000円)の対象になる年収目安 |
---|---|---|
子1人(高校生) | ~約1,030万円 | ~約660万円 |
子2人(高校生・中学生以下) | ~約1,030万円 | ~約660万円 |
子2人(高校生・高校生) | ~約1,070万円 | ~約720万円 |
子2人(大学生・高校生) | ~約1,090万円 | ~約740万円 |
子3人(大学生・高校生・中学生以下) | ~約1,090万円 | ~約740万円 |
子の数に応じて、夫婦の年収を合算した世帯年収額が目安年収未満でなければなりません。また、配偶者控除対象になっている場合は、両親のうち一方が働いている場合に該当するため、目安年収額を確認しておきましょう。
関連記事:高校の授業料が無償?授業料以外にかかる学費や支援金制度2つを解説
共働き世帯が税金で損しない働き方や税金対策とは
せっかく夫婦共働きして収入を増やしても、税金や保険料の負担としてのしかかってしまっては働き損になってしまいます。ここからは、夫婦共働き世帯が損をしない6つの働き方・税金対策について解説します。
夫婦共働き世帯が損をしない働き方・税金対策:
- 社会保険料の106万円・130万円の壁は20万円以上超える
- 夫婦2人ともが住宅ローン控除を受ける
- 年収が高い方が子どもを扶養に入れる
- 年収の高い方が医療費・保険料の所得控除を受ける
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する
- ふるさと納税をうまく利用する
損をしないためには、制度を正しく理解することが重要です。これから紹介する控除を活用して、課税される所得金額を減らせば手取り収入は増やせます。それぞれ詳しくみていきましょう。
①社会保険料の106万円・130万円の壁は20万円以上超える
社会保険料の106万円・130万円の壁は、20万円以上超えるようにしましょう。自ら社会保険に加入することで、手取りが少なくなってしまう事態は避けなければなりません。
夫の社会保険の扶養から外れた場合、健康保険料・厚生年金保険料または国民年金保険料の負担額は、年間20万円前後です。106万円・130万円の壁を20万円以上超えれば、働き損を防げ、扶養を気にせず年収アップを目指していけます。
②夫婦2人ともが住宅ローン控除を受ける
夫婦2人ともが住宅ローン控除を受けるようにするのもおすすめの方法です。住宅ローンを夫婦で組む方法の中には、夫婦それぞれが住宅ローンを契約するペアローンがあります。
ペアローンでは、夫婦とも住宅ローン控除を利用できます。2022年の改正から、住宅ローンの控除率は0.7%、控除期間は13年間になりました。住宅の種類によって設定された借入れ限度額に、控除率0.7%を掛けた額が年間控除可能金額です。
また、年末時点の住宅ローン残高に控除率0.7%を掛けた額と比較して、低い額が実際に控除できる金額となります。購入する住宅の種類・時期によっては、夫婦で住宅ローン控除を利用することで単独契約よりも還付額を増やせるかもしれません。
③年収が高い方が子どもを扶養に入れる
子どもがいる世帯は、年収が高い方が子どもを扶養に入れるようにしましょう。扶養は、所得税・住民税が安くなる扶養控除と社会保険の扶養の大きく2つに分けられます。
所得税の扶養控除は、課税される所得金額が高いほど税率も高くなるため、控除を適用すると節税効果は大きくなります。また、控除対象扶養親族の年齢によって控除額が異なり、16歳以上19歳未満で38万円、19歳以上23歳未満で63万円です。
一方、社会保険の扶養は、夫婦とも会社員であればどちらに扶養をつけても変わりません。しかし、夫婦が会社員とフリーランスや自営業で国民健康保険を納めている場合には金額に差が出てしまいます。そのため、収入が同じくらいであれば、会社員側に扶養を入れることをおすすめします。
④年収の高い方が医療費・保険料の所得控除を受ける
年収の高い方が医療費・保険料の所得控除を受けるようにしましょう。所得税は課税される所得金額に税率をかけて算出し、課税される所得金額が増えれば税率が上がる超過累進税率を採用しています。
そのため、課税される所得金額をいかに減らすかが重要です。課税される所得金額を減らすために、以下の控除を活用しましょう。
各種所得控除:
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 社会保険料控除
源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」から税率表区分を確認し、税率が高い方が所得金額を受けると大きな節税効果を期待できます。
⑤iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用するようにしましょう。iDeCoは、自身で申込・掛金拠出・運用方法を選択する任意加入の私的年金制度です。iDeCoの税制上の優遇措置は、以下のとおりです。
iDeCoの税制優遇措置:
- 掛金が全額所得控除されるため課税所得金額を減らせる
- 利息や運用益が非課税になる
- 受取時に一定額まで退職所得控除または公的年金等控除の対象となる
ただし、原則60歳になるまでは資産を引き出せないため、余剰資金で掛金額を捻出するようにしましょう。
⑥ふるさと納税をうまく利用する
ふるさと納税をうまく利用することも重要です。ふるさと納税は選択した自治体に寄付して、寄付金額から2,000円差し引いた全額を寄付金控除できる制度です。ふるさと納税で支払ったお金が戻ってくるだけなので節税にはなりませんが、返礼品が受け取れるメリットがあります。うまく活用すれば家計の支出を抑えられるでしょう。
ただし、年収200万円以下といった低い年収では控除される税金自体がないため、ふるさと納税する意味が薄れてしまいます。控除される額には、年収・家族構成・住宅ローン控除の有無などによって上限額が設定されています。ふるさと納税ポータルサイトのシミュレーションツールを用いて、上限額を確認してから利用しましょう。
まとめ:共働き世帯の年収の壁を意識して賢く働こう
共働きには税金面でメリットもあれば、デメリットも存在します。配偶者の年収が103万円を超えれば、税制上のメリットは少しずつなくなってしまいます。年収の基準額を少し超えるだけでは手取りが逆転して、働き損になってしまうかもしれません。
共働きのメリットを最大限に活かすためには、注意すべき年収の壁を意識して賢く働くことが重要です。夫婦共働き世帯が損をしない働き方や税金対策を行ない、家計負担を少しでも軽くして手取り収入を増やしていきましょう。