「時給が上がったけど扶養からは外れないかな…」
「年収がいくらになったら扶養から外れるの?」
「扶養から外れる手続きってどのタイミングでするの?」
このようにお悩みですか?
扶養内で働くと、税金や社会保険料の負担が抑えられます。しかし、扶養には条件があるため、収入が一定の額を超えると扶養から外れてしまいます。また、そのタイミングで手続きが必要です。
本記事では、扶養から外れる条件・外れるタイミング・必要な手続き・手続きしなかった際はどうなるのか、を具体的に解説します。扶養から外れて働くことを検討している人は、ぜひご覧ください。
CONTENTS
扶養から外れる条件とは?扶養に関わる年収の壁を解説
扶養には、税法上の扶養・社会保険の扶養の2パターンあります。税法上の扶養から外れると、所得税の支払いが発生します。社会保険の扶養から外れると、ご自身で社会保険料を負担しなければいけません。
実際に、扶養から外れないように働く時間を調整している人は多く存在します。厚生労働省の行った実態調査から、就業調整をした理由を探ってみましょう。
就業調整をした理由 | 配偶者がいる男性 | 配偶者がいる女性 |
---|---|---|
自分の所得税の非課税限度額(103万円)を超えると税金を払わなければならないから | 18.5% | 49.5% |
一定額を超えると配偶者の税制上の配偶者控除が無くなり、配偶者特別控除が少なくなるから | 1.3% | 36.9% |
一定額を超えると配偶者の会社の配偶者手当がもらえなくなるから | 1.1% | 16.7% |
一定額(130万円)を超えると配偶者の健康保険、厚生年金保険の被扶養者からはずれ、自分で加入しなければならなくなるから | 1.3% | 56.6% |
一定の労働時間を超えると雇用保険、健康保険、厚生年金保険の保険料を払わなければならないから | 2.9% | 20.6% |
会社の都合により雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入要件に該当しないようにしているため | 4.0% | 1.2% |
現在、支給されている年金の減額率を抑える又は減額を避けるため | 22.0% | 0.8% |
その他 | 52.5% | 6.7% |
不明 | 1.2% | 0.2% |
参照元:厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況」
配偶者がいる女性の就業調整をした理由のトップ2は、「税の支払いが生じるから」「社会保険料が発生するから」でした。扶養に入るにはいくつか条件がありますが、多くの人が悩んでいるのは年収のボーダーです。
これを超えて働くと扶養を外れるラインを、年収の壁と呼びます。税法上の扶養・社会保険の扶養には、次の3種類の壁が存在します。
年収ごとの扶養条件:
- 103万円の壁に関わる扶養条件
- 106万円の壁に関わる扶養条件
- 130万円の壁に関わる扶養条件
各壁の違いは、税法上の扶養か社会保険の扶養か、被扶養者の勤務先の規模です。年収の壁に関わる扶養条件をそれぞれ見てみましょう。
関連記事:妻は夫の扶養に入るべき?社会保険・税制上の扶養に入れるメリットや年収の壁、手続き方法を徹底解説!
①103万円の壁に関わる扶養条件
年収が103万円を超えると、超えた金額に対して所得税が課せられます。103万円の内訳は、基礎控除48万円+給与所得控除55万円です。2つの控除を差し引くと所得0円になることから、所得税は発生しないという理屈です。配偶者控除の対象外にもなりますが、年収201万円以下であれば、段階的に控除額が減る配偶者特別控除が受けられます。そのため、「103万の壁」は所得税課税のラインを意味します。
パート収入が103万円以下でほかに所得がなければ、その方に所得税及び復興特別所得税はかからず、また、その方の配偶者は配偶者控除を受けることができます。
国税庁「家族と税」
ただし、配偶者ではなく扶養親族が年収103万円を超えると、扶養控除の対象外になるため注意が必要です。扶養控除の条件はこちらです。
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
国税庁「No.1180 扶養控除」
例えば、大学生の子どもがアルバイトで年収103万円を超えた場合、扶養控除は受けられません。親を扶養に入れている場合も同じです。税の負担を少なくするには、扶養親族は年収103万円以下に抑える必要があります。
関連記事:共働き夫婦の世帯は税金面で得をする?損をする?結婚のメリットや年収の基準額、節税対策を徹底解説!
②106万円の壁に関わる扶養条件
年収106万円を超えると、勤め先が対象となる場合、社会保険料の支払いが発生します。2022年10月に社会保険の適用対象者が拡大されました。以前までは従業員501名以上の事業所に義務付けられていましたが、2023年現在では、従業員101人以上が対象になります。
被用者保険の適用事業所に勤務する者で、雇用契約時に所定内賃金(注1)が月8.8万円以上となると、被用者保険が適用され保険料負担が生じる
厚生労働省「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」
社会保険の適用拡大は段階的に行われており、2024年10月からは従業員51人以上の事業所
も対象に。年収106万円を超えて働くと社会保険料が引かれるため、手取り額は少なくなってしまいます。ただし、厚生年金を上乗せして支払うことから、将来受け取る年金は増えるため、一概に損とは言えません。
③130万円の壁に関わる扶養条件
年収130万円を超えると、106万円の壁に該当しなかった人もすべて社会保険の扶養を外れることになります。ご自身の勤め先で健康保険・厚生年金に加入することに。社会保険料の負担が生じるラインを「130万円の壁」と呼びます。
第3号被保険者(被扶養者)の年間収入の見込額が130万円以上となった場合(注2)、配偶者の扶養から外れ、国民年金・国民健康保険の保険料負担が生じる
厚生労働省「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」
配偶者のいる女性が就業調整をした理由のトップが、社会保険の被扶養者から外れることでした。将来の年金受給額は増えるものの、社会保険料の負担を懸念して働き控えしている人が多いのが事実です。
勤め先で社会保険に加入できない場合は、国民健康保険・国民年金に加入する必要があるため、より負担は大きくなるでしょう。
関連記事:社会保険の適用範囲が拡大中?パートの加入要件とメリット・デメリットを解説
社会保険・税法上の扶養から外れるタイミング
年収の壁ごとの扶養条件は理解できましたが、実際にどのタイミングで扶養を外れることになるのでしょうか。税制上および社会保険の扶養は、外れるタイミングが異なります。2パターンのタイミングを理解し、適切な時期に手続きをしてください。
扶養から外れるタイミング:
- 社会保険の扶養から外れるタイミング
- 税法上の扶養から外れるタイミング
それぞれ詳しく見てみましょう。
①社会保険の扶養から外れるタイミング
社会保険の扶養から外れるボーダーは年収130万円です。ここでいう年収は、向こう1年間の見込年収額を指し、1/1~12/31の1年間を意味するわけではありません。月の収入が10万8,333円を3ヶ月以上継続して超える場合は、1年間で130万円超えると判断される可能性が高くなります。
このタイミングで、社会保険の扶養から外れる手続きが必要です。ただし、判断基準は加入している健康保険組合によって異なります。正確に知りたい人は、問い合わせてみましょう。
②税法上の扶養から外れるタイミング
年収201万円を超えると、税法上の扶養から外れることになります。103万円を超えても対象だった、配偶者特別控除が適用されなくなるためです。
年収は1/1~12/31でカウントされるので、年収201万円となった翌年から、税法上の扶養から抜けることになります。所得控除がなくなるため、扶養者の手取り額は減ってしまうでしょう。
ただし、税法上の扶養から外れて働くことは、大きな収入に繋がることを意味します。生活が豊かになり、将来の年金受給額も増えるので、損な働き方ではありません。
関連記事:夫の扶養は損か得か?妻は年収どのくらいまで働くべきか解説
社会保険・税法上の扶養条件から外れるタイミングで必要な手続き
扶養から外れるタイミングがわかったところで、肝心な手続きについて紹介します。自動で扶養から外れることにはならず、扶養者または被扶養者からの申請が必要です。扶養から外れて働くことを考えている人は、手続き内容も確認してください。
扶養から外れるタイミングで必要な手続き:
- 社会保険の扶養条件から外れるタイミングで必要な手続き
- 税法上の扶養条件から外れるタイミングで必要な手続き
2パターンの扶養から外れる手続きを、扶養者・被扶養者ごとに解説します。
①社会保険の扶養条件から外れるタイミングで必要な手続き
年収106万円・年収130万円の壁を超える場合は、扶養に入っている社会保険から抜け、ご自身で加入する必要があります。勤め先で社会保険制度がある場合は、勤め先の健康保険組合・厚生年金に加入するため、手続きは会社経由で行います。
勤め先で加入できない場合は、市町村の窓口で国民年金・国民健康保険の加入手続きを行ってください。それでは、扶養者と被扶養者の手続きをそれぞれ説明します。
扶養が外れるタイミングで扶養者がする手続き
扶養者は、被扶養者の健康保険証を会社に返却し、「被扶養者(異動)届」を提出してください。事由発生から原則5日の以内届出が必要です。発行される「健康保険資格喪失証明書」は、社会保険の資格を失ったことを証明する大切な書類です。切り替えの際に必要となる場合もあるので、忘れずに被扶養者に渡してください。
扶養が外れるタイミングで被扶養者がする手続き
被扶養者は、新たに社会保険に加入する手続きを勤務先経由で行います。提出するのは「被保険者資格取得届」です。
国民健康保険・国民年金に加入する場合は、お住まいの市町村の窓口で申請しましょう。保険証を早く手に入れるためにも、社会保険の脱退・加入手続きは時間を空けずに行うことをおすすめします。
②税法上の扶養条件から外れるタイミングで必要な手続き
税法上の扶養は、「配偶者」と「配偶者以外の扶養親族」に分けられます。配偶者は、年収103万円を超えると配偶者控除の対象外となりますが、年収201万円までは配偶者特別控除が受けられます。そのため、年収201万円を超える場合は税法上の扶養から外れることになります。
配偶者以外の親族は、年収103万円を超える場合に扶養を外す手続きが必要です。扶養者と被扶養者の手続きをそれぞれ説明します。
扶養が外れるタイミングで扶養者がする手続き
扶養者は、被扶養者が税法上の扶養から外れることを勤め先に伝えてください。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から扶養者の名前を消すことで、手続きは完了します。
税法上の扶養は、1年間の所得税を計算する上で必要な手続きです。年末が近いタイミングでは、年末調整の際に合わせて記入すれば問題ありません。間に合わなければ確定申告で修正しましょう。
扶養が外れるタイミングで被扶養者がする手続き
税法上の扶養から外れる手続きで、被扶養者が行うものはありません。年収103万円を超えて働けば、給料から所得税が天引きされます。
納めすぎていた場合は還付金として戻ってくるので、年末調整を忘れずに行いましょう。住民税の支払いは、翌年の6月から発生します。
社会保険・税法上の扶養から外れる手続きをしなかったら?
扶養から外れる手続きが理解できました。扶養から外れて働くようになると何かと忙しく、面倒な手続きを忘れてしまう可能性もあるでしょう。本章では、扶養から外れる手続きをしなかったときに想定されるリスクをお伝えします。
扶養から外れる手続きをしなかった場合:
- 社会保険の扶養から外れる手続きを申告しなかった場合
- 税法上の扶養から外れる手続きを申告しなかった場合
それぞれのケースで、手続きをしなかった場合に起こりうる事態を解説します。
①社会保険の扶養から外れる手続きを申告しなかった場合
社会保険の扶養から外れる手続きを怠った場合は、遡って資格が取り消されます。その期間に医療機関を受診していた場合は、健康保険組合が負担した医療費を返金する必要も生じます。新たに加入する健康保険に申請すれば戻ってくるお金ですが、余計な手間が発生するのは明らかです。
未納分がある場合で、社会保険から離れ国民健康保険・国民年金に加入する場合は、遡った期間分の保険料・年金も支払わなければいけません。扶養から外れることが明らかになったらすぐに手続きを行ってください。
②税法上の扶養から外れる手続きを申告しなかった場合
税法上の扶養から外れる手続きを怠った場合は、前年度と同様の扶養家族がいる内容で年末調整が行われます。扶養控除された所得で計算されるため、納める所得税は少なくなっているでしょう。
正しく申請し直すためには確定申告する必要があり、本来支払わなければならない税金の支払義務も発生します。わざわざ確定申告するのは面倒なので、年末調整時に忘れずに確認してください。
まとめ:扶養条件や外れるタイミングをしっかり把握しよう
税法上の扶養と社会保険の扶養には、収入面の条件があり、それを超えて働くときは扶養から外れる手続きが必要です。特に社会保険を切り替える場合は、扶養者・被扶養者ともに勤め先での申請を行わなければいけません。
社会保険の扶養における年収は、その時点から1年間の見込年収です。収入が安定して増え、年収の壁を超える場合は切り替えの手続きを行いましょう。
扶養を外れて働くことは、一概に損とは言えません。壁を意識せずに働くと収入の大幅アップも見込めます。扶養条件をしっかり理解し、ご家庭にあった働き方を見つけてください。