「夫の扶養に入るメリットは?」
「年収がいくらまでなら扶養に入れる?」
「夫の扶養に入るための手続き方法が知りたい」
と悩んでいませんか?
共働きが主流になりつつある現在も、さまざまな事情で扶養に入るべきか悩む家庭は多いでしょう。ここ数年で社会保険制度も改正され、扶養に入れる条件も複雑化してきました。
いくつも年収の壁が存在するため、どのくらいの収入であれば扶養に入れるのか、理解できていない人も多いのではないでしょうか。また、扶養に入ることで得られる経済的なメリットも大きいものの、少なからずデメリットも存在します。
そこで、夫の扶養に入るメリットやデメリット、入れる条件などについてご紹介します。手続き方法についても解説しますので、これから扶養に入る人も参考にしてください。
CONTENTS
扶養とは?社会保険・税制上の定義と必要な手続きを解説
そもそも扶養とは、自身の収入で生計がたてられない場合に家族や親族が経済的援助を行うことです。援助している人を扶養者と呼び、一定の条件を満たすことで扶養控除が受けられます。扶養には以下の2種類があり、受けられる条件が異なるので注意が必要です。
扶養とは:
- 社会保険における扶養
- 税制における扶養
それぞれの扶養について、詳しい条件や必要な手続きを詳しくみていきましょう。
①社会保険における扶養の定義と必要な手続き
社会保険上の扶養に入れば、被保険者ではなくても社会保険の保障が受けられます。健康保険への加入や年金の支払いは国民の義務であるため、収入の有無は関係ありません。
しかし、被扶養者になることで毎月の保険料や年金保険料の支払いが免除の対象になります。夫の社会保険の扶養に入れるのは、年収130万円、もしくは106万円以下の人のみです。
また、内縁関係の場合、同居していなければ扶養には入れません。年齢の制限はありませんが、75歳以上は後期高齢者医療制度へ移行するため、扶養の対象外となるので注意しましょう。
手続きには、「被扶養者(異動)届 第3号被保険者関係届」の提出が必要です。管轄の年金事務所や健康保険組合等へ勤務先を経由して提出してください。
②税制における扶養の定義と必要な手続き
税制上では、社会保険の扶養とは異なり、扶養者が所得税の控除を受けられます。受けられる控除は、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の3種類です。どの控除が受けられるかは、扶養者の所得や続柄・被扶養者の収入によって変わります。
社会保険上の扶養とは異なり、対象は6親等以内の血族、または婚姻によってできた3親等以内の親族です。そのため、内縁の妻は生計が同じでも控除の対象には含まれません。また、年末調整を行った年の12月31日時点で16歳以上であることも条件の1つです。
税制上の扶養に入るためには、年末調整において書類の提出が必要です。「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記載し、提出しましょう。
関連記事:産休や育休取得時に扶養に入れる?配偶者控除・配偶者特別控除について解説
妻が夫の扶養に入ることで生じる3つのメリット
働き方は多様化し、ライフスタイルに合わせてて働く人が増えてきました。共働き家庭も増え、夫の扶養に入るべきか、決めかねている人も多いのではないでしょうか。
夫の扶養に入るかは金銭的なことも関係してくるため、どのようなメリットがあるかを考慮しましょう。妻が夫の扶養に入るメリットは、以下の通りです。
妻が夫の扶養に入るメリット:
- 夫が所得税・住民税において配偶者(特別)控除が受けられる
- 妻が保険料を支払わなくても国民年金の被保険者になれる
- 妻も夫が加入している健康保険に加入できる
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきます。
①夫が所得税・住民税において配偶者(特別)控除が受けられる
税制上において扶養者は、所得税の控除が受けられます。種類によって控除額が異なりますが、最大38万円と決して安い金額ではありません。
これにより本来支払うべき所得税が減税され、負担が軽減されます。たとえば年収500万円の夫の扶養に妻が入る場合、配偶者控除が適用されれば所得税額は約17万円です。対して、被扶養者がいない場合の所得税額は21万円と4万円の差がでます。
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②妻が保険料を支払わなくても国民年金の被保険者になれる
20歳以上のすべての日本国民には、国民年金保険料を納付する義務が課せられます。国民年金保険料は一律で、収入によって変動することはありません。
仕事をしていない人も収入が多い人も、支払う保険料は一律です。低収入の人向けに免除や猶予の制度が設けられていますが、その期間分が減額して受給額が計算されてしまいます。
しかし、夫の扶養に入れば、第3号被保険者の対象となります。そのため、毎月の国民年金保険料は負担せずに、将来は自分の年金が受け取れます。ただし、第3被保険者となれるのは夫が給与所得者の場合のみで、自営業の場合は対象外です。
関連記事:年金定期便の見方は?毎月いくらもらえるかの計算方法と確認ポイントを解説
③妻も夫が加入している健康保険に加入できる
健康保険とは、加入することで病院や薬局での自己負担が3割に軽減される制度です。すべての国民に健康保険への加入が義務付けられており、毎月の保険料は収入によって異なります。
扶養に入れば、夫の加入する健康保険に入れるため、妻は保険料を負担する必要がありません。妻の加入で夫の保険料が値上がりすることもないので、費用負担なく保証だけが確保できる点も大きなメリットと言えるでしょう。
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妻が夫の扶養に入ることで生じる2つのデメリット
夫の扶養に入るメリットは大きく、受けられる恩恵は魅力的なものばかりです。しかし、夫の扶養に入ることは、決して良いことばかりではありません。デメリットもしっかり理解した上で、扶養に入るべきか検討することが重要です。
夫の扶養に入ることで生じるデメリットを2つ紹介します。
妻が夫の扶養に入るデメリット:
- 夫の扶養に入るためには収入額の制限がある
- 夫の扶養に入っている妻の年金額は少なくなる
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
①夫の扶養に入るためには収入額の制限がある
夫の扶養に入るためには、妻の収入が一定以下でなければなりません。専業主婦である必要はありませんが、パートやアルバイトをしている場合は収入を一定額以内におさめる必要があります。
そのため、収入の調整が必要なことも多いのが現状です。上限を超えると夫の扶養から抜けなければならないため、扶養に入っている間は妻の収入を大きく増やせないでしょう。
②夫の扶養に入っている妻の年金額は少なくなる
夫の扶養に入ると妻は第3号被保険者として扱われるため、保険料を支払わなくても将来年金が受け取れます。しかし、第3被保険者である間は、付加年金や国民年金基金などの受給額を増やす制度は利用できません。
そのため、第3号被保険者である妻が将来受け取れる年金は、老齢基礎年金のみです。一方で、扶養に入らず自身が第2号被保険者になれば老齢基礎年金に加えて厚生年金も受給できるため、受給額が増えるでしょう。夫の扶養に入りながら将来の年金を増やしたい場合は、私的年金への加入をおすすめします。
妻を夫の扶養に入れる際に知っておくべき5つの年収の壁
扶養に入るためには、収入の条件があります。妻の収入が基準額を超えた場合、夫の扶養から抜けなくてはなりません。扶養から抜けると妻自身に税金や社会保険料の支払いが生じるため、手取り金額が少なくなってしまいます。
この収入金額の上限を世間では「年収の壁」と呼んでおり、扶養内で働く妻は収入を調整しているケースがほとんどです。ただし、年収の壁には以下の5種類があるため、きちんと把握して年収をいくらに抑えておくべきか考えましょう。
扶養に関わる5つの年収の壁:
- 年収100万円の壁
- 年収103万円の壁
- 年収106万円の壁
- 年収130万円の壁
- 年収201万円の壁
それぞれの壁について、詳しくみていきます。
①年収100万円の壁|妻の住民税
もっとも低い壁が年収100万円で、税制上の扶養に入る場合に用いられる金額です。国税庁のホームページには、年収100万円の壁について以下のように記載されています。
住民税については、住民税(所得割)の非課税限度額が45万円ですので、パート収入が100万円以下でほかに所得がない場合は、住民税(所得割)はかかりません。
国税庁「家族と税」
100万円は、被扶養者である妻の住民税がかからない年収の上限です。年間100万円を超えなければ妻は住民税、所得税どちらもかかりません。収入から税金が差し引かれることがないため、稼いだお金のすべてが手元に残ります。この年収であれば、社会保険の扶養にも入ることが可能です。
②年収103万円の壁|妻の所得税・夫の配偶者控除
続いて年収103万の壁は、妻の所得税と夫の配偶者控除に関係する上限額です。国税庁のホームページには、年収103万円の壁について以下のように記載されています。
パート収入が103万円以下でほかに所得がなければ、その方に所得税及び復興特別所得税はかからず、また、その方の配偶者は配偶者控除を受けることができます。
国税庁「家族と税」
配偶者控除とは、税制上で定められた控除のこと。配偶者が一定の収入以下の場合、決められた金額を控除し、扶養者の税金を軽減する制度です。夫が配偶者控除を受けるためには、妻の収入に以下のような制限があります。
配偶者の所得が給与所得だけの場合
その年の給与収入が103万円以下であれば、給与所得控除額が55万円ですので、これを差し引くと、合計所得金額が48万円以下となり、配偶者控除が受けられます。
国税庁「No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」
妻の年収が103万以下の場合、妻自体に所得税がかかりません。また、夫は配偶者控除が受けられ、最大38万円控除されることから税負担も軽減されます。社会保険上の扶養にも、年収103万円なら入ることが可能です。
③年収106万円の壁|妻の社会保険料
年収106万円は、税制上の上限額ではなく社会保険の扶養に関係します。一定条件のもとで106万円を超えると夫の扶養から抜け、妻自身が健康保険や厚生年金へ加入しなければなりません。厚生労働省のホームページには、以下の記載があります。
被用者保険の適用事業所に勤務する者で、雇用契約時に所定内賃金(注1)が月8.8万円以上となると、被用者保険が適用され保険料負担が生じる
厚生労働省「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」
ただし、適用されるのは、従業員101人以上の企業で週20時間以上働いて年収106万円を超える場合のみ。妻本人が社会保険料を負担するため、手取り額は扶養内で働いているときより大きく下がってしまいます。また、2024年10月には企業規模51人以上が該当することが決まっているので、注意してください。
④年収130万円の壁|妻の社会保険料
106万円と同じく、社会保険の扶養に関係してくるのが年収130万円の壁です。130万円は106万円の壁で該当しない働き方をした人に適用されます。厚生労働省のホームページに記載されている130万円の壁は、以下の通りです。
第3号被保険者(被扶養者)の年間収入の見込額が130万円以上となった場合(注2)、配偶者の扶養から外れ、国民年金・国民健康保険の保険料負担が生じる
厚生労働省「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」
ただし、130万円は実際の年収のことを指しているわけではありません。現在の月収から計算した見込み年収のことで、月収10万8334円を基準に、今後1年間の見込み年収を算出します。2~3ヶ月連続で月収10万8334円を超えると扶養資格を失うことが多いので、注意しましょう。
⑤年収201万円の壁|夫の配偶者特別控除
年収201万円の壁は、配偶者特別控除が適用できるかどうかの上限額です。税制上の扶養が関係するため、夫の税額に大きく影響します。国税庁のホームページでは、201万円の壁について以下のような記載がありました。
配偶者のパート収入が103万円超201万6千円未満で、ほかに所得がなければ、配偶者特別控除を受けることができます。
国税庁「No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか」
年収201万6千円を超えると、配偶者特別控除は受けられません。そのため、夫の所得控除額が減り、手取り金額は大きく変わるでしょう。ただし、妻の収入が増えれば家計にゆとりもうまれやすくなるものです。将来受け取る年金額も高くなるため、決して働き損というわけではありません。
まとめ:年収の壁を理解して扶養のメリットを活用しよう
共働きが増えた今でも、さまざまな事情で夫の扶養内で働く人は大勢います。デメリットがないわけではありませんが、扶養に入るメリットも大きく魅力的です。
しかし、扶養に入っていられるのは、一定の条件を満たした場合のみ。該当しない場合には、扶養を抜け自身で税金や保険料を負担しなければなりません。
結果的に手取り額が減ってしまうため、働き損だと感じてしまうこともあるでしょう。そうならないためにも、さまざまな年収の壁を正しく理解することが重要です。年収によって扶養に入れるか否か変わってくるので、しっかり理解して活用してください。