「繰上げ受給について知りたい」
「年金を早くもらうメリット・デメリットを知りたい」
このような悩みを抱えていませんか。
繰上げ受給とは65歳からもらえる年金を60〜64歳の間でも受け取れる制度で、早くもらいたいと考えている方もいるでしょう。
本記事では、年金を早期にもらう繰上げ受給のメリットやデメリット、どのような人におすすめかなどを詳しく解説しています。本記事を読めば、年金を早くもらう長所と短所を理解して、繰上げ受給するかを選べるようになるでしょう。
CONTENTS
年金をもらう繰上げ受給とは?
繰上げ受給とは、本来65歳から受け取る老齢年金を60〜64歳の間に繰り上げて受け取り可能になる制度のことです。繰り上げて受け取りするためには、手続きが必要です。
繰上げ受給は2022年度に年金制度が改正され、減額率は1カ月につき0.4%となっています。減額率は、『繰上げ請求した月から65歳になる日の前月までの月数×0.4%』の式で計算可能です。
たとえば、繰上げ受給を61歳の誕生月(61歳0ヶ月)から行った場合の減額率は、『0.4%×48カ月=19.2%』です。繰上げ受給請求で決定した減額率は変更されず、最後まで減額率を掛けた年金額を受け取れる仕組みです。
関連記事:お金の勉強は何から始めるべき?知識の必要性や学ぶメリット、初心者におすすめの勉強法を徹底解説!
早くもらえる2種類の年金
早くもらえる年金は、下記の2種類があります。
年金の種類:
- 国民年金
- 厚生年金
主な年金は2種類あり、それぞれ対象者が異なり、もらえる条件も違います。
国民年金と厚生年金のそれぞれの特徴を見ていきましょう。
①国民年金
国民年金は、日本国内に居住している20歳〜60歳までの人が加入する年金制度です。納付期間は20歳〜60歳までの40年間で、通常であれば65歳になってから受け取りできます。
加入者の区分は第1号被保険者と第2号被保険者、第3号被保険者の3つです。第1号被保険者の対象者は自営業者や農業者、学生、無職の人などです。
第2号被保険者の対象者には、会社員や公務員が該当しています。第3号被保険者の対象者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収が130万円未満の人が当てはまります。
区分ごとに加入するときの届出方法と、保険料を納付する方法が異なるため注意が必要です。老齢給付金だけではなく、障害や死亡による理由でも受給が可能です。
②厚生年金
厚生年金とは、会社で働いている人や公務員が加入できる公的年金です。厚生年金に加入した場合は、国民年金だけでなく厚生年金も合わせた2階建ての仕組みで年金の受け取りが可能です。
厚生年金の保険料は給料やボーナスに保険料率をかけて算出され、事業主と従業員が半分ずつ支払います。保険料率は、2017年から18.30%で固定されています。
厚生年金は、年金である老齢給付金以外に、障害や死亡による理由でも繰り上げて受け取ることが可能です。自分の加入状況や支払い状況はねんきん定期便で確認でき、自分の状況を確認したい方は、ねんきん定期便を一度見ておきましょう。
関連記事:厚生年金を受け取るための最低年数は何年?転職など状況別に加入期間を解説
年金を早くもらう2つのメリット
年金を早期にもらうメリットは、下記の2つです。
早くもらうメリット:
- 早い時期から安定した収入が得られる
- 健康な時期から年金をもらえる
年金を早く受け取ると、すぐに安定したお金が手に入るうえに、健康なうちにお金を使えるメリットがあります。
それぞれ具体的に解説します。
①早い時期から安定した収入が得られる
早期にもらうメリットの1つ目は、早い時期から安定した収入を得られることです。65歳になる前に受け取ることで、年金を生活費の足しにできるため、経済的に不安定な状況を乗り切りやすくなります。
早くもらうことで、生活に余裕が出て、その分ストレスなく過ごせる可能性が高いです。厚生労働省によると、令和3年度に繰上げ受給している人の割合は国民年金11.2%、厚生年金0.6%です。
早期退職した場合や会社の景気が悪くなった場合は、早くもらって生活費に充てることを検討するといいでしょう。
②健康な時期に年金をもらえる
早期にもらうメリットの2つ目は、65歳の誕生日を迎えるまでの健康な時期にもらえることです。65歳になって年金を受け取り始めても、体の調子が悪い場合、満足できるお金の使い方ができない可能性があります。
自由に動き回れるときの方が、お金の使い道の選択肢も広がります。今は元気に過ごしていても、年を取るほどいつ健康状態が崩れるか予想できないものです。
「若くて元気で旅行や趣味などを楽しめるうちに年金をもらっておけばよかった」と後悔するかもしれません。持病を抱えている方や健康面に心配がある方は、毎月の受け取り額が減ったとしても、早くもらうことを検討してみてみましょう。
年金を早くもらう4つのデメリット
年金を早期にもらうデメリットは下記の4つです。
早くもらうデメリット:
- 一度受給時期を変更するとあとから変更できない
- 受給できる年金が減る
- 障害基礎年金や遺族厚生年金を受給できないことがある
- 国民年金と厚生年金は同時に変更しなければならない
早期受給すると、受給できる年金が減ったり、障害基礎年金や遺族厚生年金を受給できなかったりする可能性があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①一度受給時期を変更するとあとから変更できない
早期にもらうデメリットの1つ目は、受け取り開始時期を一度変更するとあとから変更できないことです。61歳から受け取りを開始したら、62歳・63歳・64歳のときに「やっぱり受給を停止しよう」と思っても変更できません。
受け取りを停止できないので、一度繰り上げて受け取り始めると、毎月受け取る年金額が減ることに了承したことになります。
繰上げ受給後、臨時収入が入ったり、仕事に就いたりなどして経済的に余裕が出て年金を早くもらう意味がなくなる場合もあります。繰上げて受け取りを開始すると、それ以降は受け取り時期を変えられないので注意しましょう。
②受給できる年金が減る
繰上げて受け取りした場合は、原則どおり65歳から受給する場合と比べて、毎月受け取れる年金額が少なくなります。
減額された年金額があとから戻ることはありません。そのため、繰上げ受給を開始したら、65歳から受け取る場合との年金総額の差は長生きするほど広がります。
受け取れる年金の総額が減る可能性があるため、繰上げ受給したい特別な理由がなければ年金は早くもらわない方が無難です。年金を早くもらう場合、毎月受け取る年金額が減ることを加味したうえでじっくり検討しましょう。
関連記事:固定費を削減する7つの方法!節約する際の3つの注意点を解説
③障害基礎年金や遺族厚生年金を受給できないことがある
障害基礎年金や遺族厚生年金を受け取れないことがあります。障害基礎年金とは、病気やけがなどで仕事や生活に支障が出た場合に受け取れる年金のことです。
遺族厚生年金とは年金加入者がなくなった場合に、その遺族が受け取れる年金を指します。繰上げ受給を始めた場合は、60歳〜65歳になるまでの間に障害基礎年金の受給対象になっても障害厚生年金を請求できません。
また、遺族厚生年金は老齢基礎年金と合わせて受け取れないため、65歳になるまでは遺族厚生年金を受け取れなくなります。
④国民年金と厚生年金は同時に変更しなければならない
国民年金の利用条件を満たしている場合、厚生年金だけを繰上げ受給したくてもできません。60歳になったあとに厚生年金に加入し続けることになった場合、国民年金だけを早くもらうのも不可能です。
ただし、厚生年金には、60歳になったあとに年金を受け取りながら働ける在職老齢年金があります。在職老齢年金を受け取る場合は、年金の受け取り額と給料の合計が一定の金額を超えないように調整する必要があることを覚えておきましょう。
年金を早くもらうのがおすすめな人の2つの特徴
年金を早めにもらうのがおすすめな人の特徴は、下記の2つです。
おすすめな人の特徴:
- 働くことができない人
- 長期的な収入が見込める人
健康に問題がある方や金銭的な問題を抱えている方は、年金を早くもらうことで現在抱えている問題を解決できる可能性があります。
順に解説します。
①働くことができない人
早期にもらうのがおすすめな人は、体の調子がよくない方や両親の介護をしないといけないなどの理由で働けない人です。60歳を過ぎてから働けず生活費の捻出に困る場合は、繰上げ受給を行い、年金を受け取ることで生活に余裕を持たせられます。
「毎月受け取る年金額が減るから」と65歳まで生活費に困りながら暮らすよりは、繰上げ受給をした方がストレスなく過ごせます。働けない場合でも、年金をもらうまでの生活費として使える十分な貯金がある場合は繰上げて受け取らなくてもいいでしょう。
健康面や介護など特別な理由がある場合は、年金を早くもらうことも視野に入れておきましょう。
②長期的な収入が見込める人
65歳になったあとも長期的な収入が見込める場合、繰上げ受給して毎月受け取る年金額が減っても、不安は少ないでしょう。長期的な収入とは、労働収入ではなく、不動産収入や株式配当収入などのストック型収入のことです。
労働収入の場合は、病気やけがで働けなくなったときに収入が途絶えてしまいます。毎月受け取る年金額が減ったことが、そのあとのお金のやりくりに影響する可能性があります。65歳になったあとも長期的な収入が見込める方は、年金を早くもらうことを検討してみましょう。
年金を早くもらうことがおすすめできない人の2つの特徴
年金を早くもらうことがおすすめできない人の特徴は、下記の2つです。
おすすめできない人:
- 高年齢雇用継続給付を受給する人
- 60歳過ぎても働く人
高年齢雇用継続給付をもらう人や60歳すぎても働ける人は、早くもらうことをおすすめできません。
それぞれの人の特徴を詳しく見ていきましょう。
①高年齢雇用継続給付を受給する人
高年齢雇用継続給付金とは、60歳でもらっていた給料の75%未満で働いている場合に、差額を補うために支払われるお金です。
高年齢雇用継続給付を受ける場合に繰上げ受給を開始すると、年金の一部もしくは全部が支給停止になる可能性があります。
繰上げて受け取りすることによって、毎月受け取れる年金額自体も減ってしまいます。高年齢雇用継続給付は2種類あり、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金です。
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金では、受け取る条件や金額が異なります。高年齢雇用継続給付を受け取るのか加味しながら、繰上げ受給を検討してみましょう。
②60歳過ぎても働く人
繰上げて受け取ることによって毎月受け取る年金額が少なくなるうえに、在職老齢年金で受け取る額にも影響を与えます。
在職老齢年金とは、60歳になったあとに仕事をしながら受け取れる老齢厚生年金のことです。60歳以上で厚生年金の繰上げ受給をする場合、受け取り金額が47万以上で在職老齢年金の一部もしくは全額支給されません。
60歳を過ぎても働く場合は、在職老齢年金が関係してくるため、年金を早くもらうマイナス面もしっかり理解しておきましょう。
まとめ:年金を早くもらうメリット・デメリットを理解したうえで判断しましょう
本記事では、年金を早期にもらう繰上げ受給のメリットやデメリット、おすすめできる人などを解説しました。
繰上げ受給とは、本来65歳から受け取る老齢年金を60〜64歳の間に繰り上げて受け取れる制度のことです。年金を早くもらうことで、早い時期から安定した収入が得られ、健康な時期から年金をもらえるメリットがあります。
一方で、一度受け取り時期を変更するとあとから変更できない、受け取れる金額が減るなどのマイナス面もあります。年金を早くもらうのがおすすめな人は、諸事情で60歳になったあとに働けない人や長期的な収入が見込める人です。
上記2つに該当しない場合は、早めにもらうのはおすすめできません。年金を早くもらう場合、自分の状況を考えたうえで、判断しましょう。