「退職金にかかる税金にはどんな種類があるの?」
「仕事を辞めたあとにも税金を支払う必要があると思うけど、どのような計算方法になっているかわからない」
上記のような悩みをお持ちではないでしょうか?
退職後の税金は受け取り方によって異なるため、家庭状況に合わせた選択が大切です。
本記事では、退職金にかかる3つの税金や税金の計算方法、3つの受け取り方を解説します。
本記事を読めば、退職金にかかる税金がわかり、退職後に備えられます。退職後の税金がどれだけかかるのか気になっている人は、ぜひ参考にしてみてください。
CONTENTS
退職金にかかる3つの税金
退職金にかかる3つの税金は、下記のとおりです。
退職金にかかる税金:
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
受け取り方によって税率が変わるため、家庭状況に応じた選択が求められます。
それぞれ具体的に解説します。
税金①:所得税
所得とは、年収から必要経費を差し引いたもので、所得税は、毎年1月1日〜12月31日までに得た所得に課税されます。
会社員の場合は給与所得控除が適応され、さらに所得控除も差し引いた金額に課税される点が特徴です。
所得税には、総合課税と分離課税の2つの課税方法があります。総合課税とは、個人のすべての所得を合算して税率を適用する税制です。分離課税は、退職金を一時金で受け取る場合に適用され、他の所得とは別に計算されるものです。
一時金を選ぶ場合は「退職所得控除」が適用され、年金を選ぶ場合は「公的年金等控除」が適用されます。
どちらを利用するのかによって、実際に納める税額が変わります。そのため、退職金を受け取る際には、事前に受け取り方とそれに伴う影響を考えておくことが重要です。
税金②:住民税
住民税は、毎年1月1日時点で住んでいる都道府県と市区町村に支払う税金で、複数の種類が存在します。
東京都では「都民税」、道府県では「道府県民税」、市町村では「市町村民税」があります。東京都23区内では「特別区民税」がかかる点が特徴です。
住民税の納付には、「均等割」と「所得割」の2つの要素が組み合わさっています。均等割は市町村民税と特別区民税が3,500円、道府県民税と都民税が1,500円で、合計5,000円になります。
均等割は、一定の所得を上回る人に一律にかかる税金です。一方、所得割は前年の所得に基づいて計算され、税率は一律10%(道府県民税・都民税は6%、道府県民税・都民税は4%)です。一定の所得以下の人には、均等割は課税されません。
税金③:復興特別所得税
復興特別所得税とは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の復興のための財源を集めるために徴収される税金です。
2013年から2037年まで課税されると定められています。したがって、2037年までに退職する場合は、退職金から差し引かれます。
税率は所得税額の2.1%で、計算式は所得税額 × 0.21(2.1%)です。
関連記事:早期優遇退職制度とは?退職金の割り増しやメリット・デメリットを解説
退職金の受け取り方と控除額
退職金の受け取り方は、以下の3つです。
退職金の受け取り方:
- 年金として分割で受け取る
- 一時金として一括で受け取る
- 年金と一時金を併用する
受け取る方法が異なると、税金の種類が違います。また、2つの方法を併用する場合、会社によって利用できないことがあるため、注意が必要です。
退職金の受け取り方①:年金として分割で受け取る
年金として分割でもらう場合は、退職金は雑所得の扱いになります。計算する際、受け取る年金額から「公的年金等控除額」を差し引いて導き出すことが可能です。
税額を求める計算式は、『所得金額合計 - 公的年金等控除額 = 雑所得』です。公的年金等控除額は、65歳未満か65歳以上などの年齢の条件や公的年金など収入金額によって異なります。たとえば、65歳未満で公的年金といった収入金額が130万円未満の場合は、60万円です。
年金以外の所得金額の合計が1,000万円以上になる場合は、1,955,000円を上限として公的年金等控除額が変わります。詳細は、国税庁や居住地の自治体のホームページで確認できます。
退職金の受け取り方②:一時金として一括で受け取る
退職金を一時金と扱って一括で受け取る場合は、分離課税方式が採用されます。退職金は「退職所得」として扱われ、ほかの所得とは別になります。また、計算する際は、「退職所得控除」を差し引くことが可能です。
加入中の「確定給付企業年金」や「企業型確定拠出年金」を退職時に受け取る場合、退職金と合わせて税金額を計算します。
勤続年数が20年以下の場合の計算式は、『40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)』です。勤続年数が20年を超える場合は、『800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)』です。
退職所得は、『(収入金額(源泉徴収される前の金額)- 退職所得控除額)× 1/2』の計算式で求められます。
退職金の受け取り方③:年金と一時金を併用する
退職金は、年金と同じ扱いでわけて受領する方法と一時金のように扱って受領する方法を併用して受け取れます。会社によっては、退職金の一部だけを一時金の扱いで受け取ることが可能です。
一時金を差し引いた残りの金額は、年金の扱いで受け取ることが可能です。一時金は「退職所得」、年金扱いで受領する金額は「雑所得」として税額を導き出します。
併用して受け取れるかどうかは、会社によって異なるため、自分の会社に一度確認してみましょう。
関連記事:世帯年収ごとの生活レベルが知りたい!世間の平均年収や収入ごとの生活水準、収入アップの方法を徹底解説
退職金にかかる税金の計算方法
退職金にかかる税金の計算方法を見ていきましょう。
税金の計算方法:
- 所得税
- 住民税
住民税の税率は一定ですが、所得税は退職金によって税率が異なる点が特徴です。
それぞれ詳しく解説します。
所得税の計算方法
所得税にかかる税率や控除額は、課税される退職所得ごとに異なります。課税される税率と控除額は以下のとおりです。
金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「退職金と税」
たとえば、課税される退職所得金額が250万円の場合、税率10%・控除額97,500円です。
所得税は『250万円 × 0.1(10%)-97,500円=15万2,500円』のように計算できます。ただし、2037年までに退職した場合、「復興特別所得税」が2.1%の税率で発生します。
住民税の計算方法
住民税の計算式は、『課税される退職所得金額 × 0.1(10%) = 住民税額』です。住民税の税率は、一律10%と決まっています。
たとえば、退職所得金額が250万円の場合は、『250万円 × 0.1(10%)= 25万円』です。
退職金に関するよくある質問
最後に退職金に関するよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問:
- 退職金に確定申告は必要なのか?
- 退職金の税金はいつ払えばいいの?
- 年金と一時金どちらで受け取る方が得になる?
- 退職金は前払いできる?
それぞれ解説します。
退職金に確定申告は必要なのか?
退職所得の受給に関する申告書を提出すれば、退職金に対して確定申告は必要ありません。事前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があるので注意しましょう。
一方、申告書の提出を怠ると、所得税と復興特別所得税が一律20.42%で差し引かれるので確定申告が必要となり、注意が必要です。
退職金の税金はいつ払えばいいの?
退職金にかかる税金は、退職者自身が直接支払う必要はありません。会社が退職金を支払う際に源泉徴収が行われ、税金が天引きされます。会社は退職金を支払った月の翌月10日までに税金を納めます。
一方、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、確定申告をする必要があるので注意しましょう。確定申告を行うことで、所得税の還付を受けられる可能性があります。
年金と一時金どちらで受け取る方が得になる?
退職金の受け取り方法には一時金と年金があり、どちらがお得かは家庭状況によります。税制面では、一時金を選ぶと退職所得控除を受けられるので、税金の軽減が期待できます。また、退職金の金額が退職所得控除より小さい場合は税金がかかりません。
一方で、年金を選ぶと、一定の利率で運用されることで受け取る金額が増加する可能性があります。年金は公的年金やほかの収入と合わせて、社会保険料や税金が計算されます。また、トータルの収入が一定の範囲を超えると、医療費や介護保険サービスの自己負担割合が増加する可能性もあるでしょう。
iDeCoや企業年金を受け取る予定の場合は、これらの組み合わせも考慮すべきです。
退職金は前払いできる?
一般的に、会社が「退職金前払い制度」を導入している場合は、退職金の前払いは可能です。制度を利用する場合は、在職中の給与や賞与に上乗せされる形で、通常の給与明細に反映されます。
ただし、前払いは給与所得になるため、通常の給与と同様に税金や社会保険料が発生します。前払いの退職金が給与に加算されることで、税金や社会保険料も相応に増額されるでしょう。
一時金で受け取れば、控除が適用され、税制上の優遇を受けられるため、税金面でのメリットを考慮すると、一時金で受け取る方が大きいです。
関連記事:ファイナンシャルプランナーに相談できる内容とは?メリットや相談の流れを解説
まとめ:退職金にかかる税金を理解し、きちんと払いましょう
本記事では、退職金にかかる3つの税金や税金の計算方法、3つの受け取り方を解説しました。
退職金を分割でもらう場合、退職金は雑所得の扱いになります。総合課税となるので、公的年金や企業年金などそのほかの雑所得に該当する収入と合わせて税額を計算するのが特徴です。
一時金と扱って一括で受け取る場合は、分離課税方式が採用されます。退職金は退職所得として扱われ、ほかの所得とは別に課税される仕組みです。
退職金にかかる税金はどのような受け取り方をするかで異なるため、自分の条件に合う受け取り方を選択して、きちんと支払いましょう。