「児童扶養手当は年収いくらまでならもらえるの?」
「自分はいくらもらえるんだろう…」
「申請時に年収要件を満たせば子どもが大きくなるまでずっともらえる?」
このような悩みを抱えていませんか?
ひとり親が子育てと仕事を両立するのは簡単なことではなく、経済的に大きな負担がかかるでしょう。児童扶養手当は、ひとり親家庭への自立支援策の1つで経済的な負担を軽減できます。しかし、児童扶養手当は申請が必要なため、支給要件や所得制限の基準を満たした上で申請や更新手続きをしないと受給できません。
そこで今回は「児童扶養手当の支給要件と支給額」・「児童扶養手当をもらう際に知っておくべき注意点」をご紹介。具体的なケースを挙げてシミュレーションも行います。この記事を読めばあなたが児童扶養手当の支給対象かわかるでしょう。
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児童扶養手当とはいくらもらえる?支給要件と支給額を確認
児童扶養手当は、離婚などにより父または母と生計を同じくしていない児童がいる家庭の生活安定と自立促進のため導入されました。平成22年より父子家庭も対象となり、児童扶養手当はひとり親家庭への強力な支援策です。
それでは、児童扶養手当とは一体いくらもらえるのでしょうか。
児童扶養手当について:
- 支給対象者と支給要件
- 1ヶ月あたりの支給額
児童扶養手当の支給対象者・支給要件・1ヶ月あたりの支給額について、それぞれ詳しくみていきましょう。
①児童扶養手当の支給対象者と支給要件
まずは、児童扶養手当の支給対象者と支給要件についてみていきましょう。厚生労働省の児童扶養手当制度における支給対象者・支給要件は、以下のとおりです。
2.支給対象者
18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母、監護し、かつ生計を同じくする父又は養育する者(祖父母等)。
3.支給要件
父母が婚姻を解消した児童、父又は母が死亡した児童、父又は母が一定程度の障害の状態にある児童、父又は母の生死が明らかでない児童などを監護等していること。
厚生労働省「児童扶養手当制度の概要」
児童扶養手当での児童の対象年齢は、障がいがある場合を除き、満18歳に達した年度末です。親の対象は、ひとり親かどうかが条件となります。
よく似た制度に児童手当・特別児童扶養手当がありますが、対象者・子どもの年齢・金額が異なるため覚えておきましょう。
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令和3年度の児童扶養手当の受給者数は約85万人
令和4年度に厚生労働省が厚生統計要覧児童扶養手当受給者数を公表しました。実際に児童扶養手当を受給している方は、令和3年度で約85万人です。児童扶養手当の世帯類型別受給者数の割合は、以下のとおりです。
世帯類型 | 令和3年度受給者数 |
---|---|
母子世帯 | 78万2,249人 |
父子世帯 | 4万1,812人 |
その他 | 3万0,479人 |
合計 | 85万4,540人 |
参照元:厚生労働省「厚生統計要覧(令和4年度)|児童扶養手当受給者数」
母子世帯数は、児童扶養手当を受給している全体数の約92%を占めています。そのうち、約86%は離婚によってひとり親となった母子世帯でした。
②児童扶養手当の1ヶ月あたりの支給額
次に、児童扶養手当の1ヶ月あたりの支給額についてみていきましょう。児童扶養手当の手当額には、全部支給と一部支給があります。
児童の数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
児童1人目月額(令和5年4月~) | 4万4,140円 | 4万4,130円~1万0,410円 |
加算額 (児童2人目) | 1万0,420円 | 1万0,410円~5,210円 |
加算額(児童3人目以降1人につき) | 6,250円 | 6,240円~3,130円 |
参照元:神戸市「児童扶養手当」
申請者および生計を同じくしている扶養義務者などの所得によって、支給額が決定します。また、児童の数は1人目を基準に2人目以降を加算していく形となります。
なお、平成29年4月より児童扶養手当も公的年金同様、賃金・物価の変動に合わせて支給額が変わる物価スライド制が導入されました。そのため、支給額は毎年改定される点を把握しておきましょう。
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児童扶養手当は年収がいくらまでならもらえるの?
児童扶養手当の受給可否、また受給額は申請者の所得に応じて決定されます。それでは、児童扶養手当は具体的に年収がいくらまでならもらえるのでしょうか。児童扶養手当での所得額の計算方法は、以下の計算式を用います。
所得額=年間収入金額-必要経費(給与所得控除額等)+養育費-8万円(社会保険料相当額)-諸控除
大阪市「児童扶養手当」
上記の計算式で算出した所得額が所得制限限度額表の範囲内であれば、児童扶養手当を受給できます。単に、年収額が基準となるわけではありません。
年収から給与所得控除や社会保険料相当として全員一律8万円の控除、諸控除を差し引きます。さらに、養育費相当分として、養育費の8割が年収計算に加算されます。それでは、実際の児童扶養手当の所得制限限度額と年収の目安についてみていきましょう。
児童扶養手当の所得制限限度額と年収の目安:
- ひとり親
- 孤児の養育者
ひとり親・孤児の養育者、それぞれの場合について解説します。
①ひとり親の場合の所得制限と年収の目安
最初に、ひとり親の場合の所得制限と年収の目安について解説します。扶養親族等の数によって、それぞれ全部支給と一部支給の所得制限限度額が異なります。
扶養親族等の人数 | 全部支給の所得制限限度額 | 全部支給の収入額の目安 | 一部支給の所得制限限度額 | 一部支給の収入額の目安 |
---|---|---|---|---|
0人 | 49万円 | 122.0万円 | 192万円 | 311.4万円 |
1人 | 87万円 | 160.0万円 | 230万円 | 365.0万円 |
2人 | 125万円 | 215.7万円 | 268万円 | 412.5万円 |
3人 | 163万円 | 270.0万円 | 306万円 | 460.0万円 |
4人 | 201万円 | 324.3万円 | 344万円 | 507.5万円 |
5人 | 239万円 | 376.3万円 | 382万円 | 555.0万円 |
参照元:大阪市「児童扶養手当」
例えば、扶養親族である子どもが1人の場合、全部支給の収入額の目安は年収160万円です。年収160万円〜365万円未満であれば、一部支給が認められます。
上記の表に示す収入額は給与所得者を参考にしているため、給与収入以外の収入の場合は限度額が異なるため気をつけましょう。
②孤児の養育者の場合の所得制限と年収の目安
次に、孤児の養育者の場合の所得制限と年収の目安についてみてみましょう。扶養親族等の数によって所得制限限度額が異なりますが、全部支給や一部支給の区別はありません。
扶養親族等の人数 | 所得制限限度額 | 収入額の目安 |
---|---|---|
0人 | 236万円 | 372.5万円 |
1人 | 274万円 | 420.0万円 |
2人 | 312万円 | 467.5万円 |
3人 | 350万円 | 515.0万円 |
4人 | 388万円 | 562.5万円 |
5人 | 426万円 | 610.0万円 |
参照元:大阪市「児童扶養手当」
ひとり親の場合の一部支給収入額目安と比較すると、扶養親族等の人数0人を除いて限度額が44万円高くなっています。扶養親族等の人数0人は、離婚後も子どもは父親の扶養となっている状態で母親と生活している場合などが挙げられます。
関連記事:子供の扶養はどっちにつける?支払う税金をお得にする方法を徹底解説
児童扶養手当をもらう際に知っておくべき3つの注意点
児童扶養手当の支給要件・支給額・所得制限限度額・年収の目安がわかりました。ここからは、児童扶養手当をもらう際に知っておくべき注意点についてご紹介します。
児童扶養手当についての注意点は、以下の3つです。
児童扶養手当についての注意点:
- 養育費をもらっているなら8割が年収に加算される
- 受給から5年等経過すると減額される可能性がある
- 親と同居している場合は親の年収も影響する
あなたの年収面で児童扶養手当の要件を満たしていても、必ず受給できるわけではありません。それぞれ詳しくみていきましょう。
①養育費をもらっているなら8割が年収に加算される
児童扶養手当についての注意点1つ目は、養育費をもらっているなら8割が年収に加算されることです。養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する衣食住費・教育費・医療費などです。
たとえ離婚によって親権者でなくなった親であっても、親として養育費の支払義務が生じます。
離婚した相手方から養育費をもらっている場合でも児童扶養手当の申請(請求)はできますか?
離婚した相手方から養育費をもらっている場合でも申請(請求)できます。
なお、申請(請求)者本人の所得額に1年間で受け取った養育費の8割を加えた額が所得制限額内であれば、手当は支給されます。
かすみがうら市「児童扶養手当に関するよくある質問」
受け取った養育費の8割分を養育費相当分として、児童扶養手当での所得額計算式に算入しなければなりません。
②受給から5年等経過すると減額される可能性がある
児童扶養手当についての注意点2つ目は、受給から5年等経過すると減額される可能性があることです。児童扶養手当受給期間が5年等を超えた場合、手当の2分の1が支給停止となる一部支給停止措置があります。
児童扶養手当の一部支給停止制度は、ひとり親の就業や自立を促すための施策です。一部支給停止措置の対象者には、児童扶養手当を受給して5年等経過する約2ヶ月前に通知が届きます。
平成20年4月から、児童扶養手当の受給から5年等を経過する要件にあてはまる受給者(父母に限る)で、障害、病気、親族の介護等のために就労困難な事情がないにもかかわらず、就労や求職活動をして自立に向けて努力していない場合には、5年等を経過した翌月の手当から、支給手当額の2分の1を支給停止とする制度に変わりました。
江戸川区「児童扶養手当の支給制限について(児童扶養手当法13条の3による一部支給停止制度について)」
ただし、就労している・病気やケガによって就労困難など、一部支給停止措置の例外もあります。一部支給停止除外の事由に該当する場合は、期限内に適用除外申請の手続きを市町村窓口で行ってください。
また、毎年8月には現況届を提出する必要があり、継続受給の可否を自治体が判断する点も覚えておきましょう。
③親と同居している場合は親の年収も影響する
児童扶養手当についての注意点3つ目は、親と同居している場合は親の年収も影響することです。アットホーム株式会社が平成29年に実施した調査によると、実家暮らしのシングルマザーは全体の24.3%を占めました。
質問
離婚後、両親と同居する場合は児童扶養手当の対象になりませんか。
回答
両親と同居する場合でも、申請者本人と両親がそれぞれ所得制限限度額を超えない範囲の所得であれば、児童扶養手当の支給対象になります。
吹田市「児童扶養手当(よくある質問)」
受給資格者だけでなく、両親の所得が扶養義務者・配偶者の所得制限限度額を超えていれば児童扶養手当は支給されません。なお、所得制限限度額については孤児の養育者の場合と同基準となるため、参照しておきましょう。
児童扶養手当をもらえるかシミュレーションしてみよう
それではイメージしやすいように、実際に児童扶養手当をもらえるかシミュレーションしてみましょう。シミュレーションするケースは、以下の2パターンです。
シミュレーションするケース:
- 児童3人、給与所得控除後の所得額150万円、養育費なしの場合
- 児童1人、給与所得控除後の所得額100万円、養育費月5万円の場合
どちらもひとり親世帯を想定しており、児童の数・給与所得控除後の所得額・養育費の有無の違いがあります。あなたの状況と照らし合わせながら、参考にしてみましょう。
①児童3人、給与所得控除後の所得額150万円、養育費なしの場合
ケース①は、児童3人、給与所得控除後の所得額150万円、養育費なしの場合です。
《ケース①》
児童:3人
給与所得控除後の所得額:150万円
養育費:なし
所得額の計算式は、以下のとおりです。
所得額:
= 年間収入金額 – 必要経費(給与所得控除額等)+ 養育費 – 8万円(社会保険料相当額)- 諸控除
= 150万円 + 0円 – 8万円
= 142万円
これにより算出された所得額は142万円。扶養親族等の数が3人の場合における全部支給の所得制限限度額163万円以下となり、全部支給が受けられます。よって、児童扶養手当の月額は、次のようになります。
児童扶養手当の月額:
= 4万4,140円 + 1万0,420円 + 6,250円
=6万0,810円
児童1人目に2人目3人目がそれぞれ加算され、児童扶養手当は月額6万0,810円です。
②児童1人、給与所得控除後の所得額100万円、養育費月5万円の場合
ケース②は、児童1人、給与所得控除後の所得額100万円、養育費月5万円の場合です。
《ケース②》
児童:1人
給与所得控除後の所得額:100万円
養育費:月5万円
所得額の計算式は、以下のとおりです。
所得額:
= 年間収入金額 – 必要経費(給与所得控除額等)+ 養育費 – 8万円(社会保険料相当額)- 諸控除
= 100万円 + 5万円×12ヶ月×0.8 – 8万円
= 140万円
これにより算出された所得額は140万円。扶養親族等の数が1人の場合における全部支給の所得制限限度額は87万円、一部支給は230万円です。所得額140万円は、87万円以上230万円以下となるため、一部支給が受けられます。
一部支給は児童数によって異なる係数をかけて算出します。児童扶養手当の月額は、以下のとおりです。
児童扶養手当の月額:
= 4万4,140円 -(申請者の所得額 – 所得制限限度額)× 0.0235804
= 4万4,140円 – (140万円 – 87万円)× 0.0235804
= 4万4,140円 – 1万2,500円
= 3万1,630円
児童扶養手当の月額は、3万1,630円になります。実際は給与額や養育費だけでなく諸控除も考慮する必要があるため、個人によって異なる点を理解しておきましょう。
まとめ:児童扶養手当がもらえる要件をしっかり確認しよう
児童扶養手当は、ひとり親家庭の経済的な負担を軽減する強力な支援策です。しかし、児童扶養手当は申請主義であるため、自分で積極的に情報を集めなければ国や自治体の支援策に気づけません。
受給を検討している方は、児童扶養手当の支給対象者・支給要件・所得制限を満たしているか確認する必要があります。さらに、養育費や一部支給停止制度、親と同居している場合も児童扶養手当に影響するため制度をしっかり確認しておきましょう。