「会社の手当にはどんな種類のものがある?」
「未払い残業手当のニュースをよく聞くけど、残業手当って必ず支給してもらえるの?」
「通勤手当が非課税と課税欄の両方に記載されているのはなぜ?」
このような疑問を抱えていませんか?
手当には多くの種類がありますが、会社が詳細に説明してくれるわけではないのですべてを理解している方は少ないでしょう。しかし、会社員として請求権利がある手当も存在するため、会社の手当を就業規則から確認しておくことは重要です。
そこで今回は「法律で定められている手当と任意の手当」「課税対象・非課税対象の手当」についてご紹介。会社独自の手当についても個別に解説するため、この記事を読めば会社の手当内容を理解できるでしょう。
CONTENTS
会社員の給与明細に記載のある「手当」とは?
会社員の給与明細に記載のある「手当」とは何なのでしょうか。会社から支給される手当の種類は、通勤手当や残業手当など複数存在します。
そもそも手当とは、基本給とは別に会社から支給される賃金のことです。手当を支給する目的は、以下のとおりです。
手当を支給する目的:
- 会社員間の格差排除や縮小のため
- 会社員のモチベーション向上のため
- 給与に調整金として加算するため
手当は、以下のように法定手当・任意手当、課税・非課税に分けられます。
給与明細に記載のある手当とは:
- 手当には法律で定められている手当と任意の手当がある
- 手当には課税対象のものと非課税のものがある
それぞれについて詳しくみていきましょう。
手当には法律で定められている手当と任意の手当がある
手当には法律で定められている手当と任意の手当があります。法律で定められている手当は該当者に対して法的に支給する義務があり、支給を怠れば労働基準法違反により罰則が科されます。例えば、残業手当・深夜残業手当・休日出勤手当などです。
一方、任意の手当は、会社によって種類・支給対象・手当金の算定規則などが異なります。任意の手当は、会社員の家族状況・職位・仕事内容などの条件から支給され、通勤手当・出張手当・住宅手当などが挙げられます。
手当には課税対象のものと非課税のものがある
手当には課税対象のものと非課税のものがあります。手当は、基本的に給与とみなされるため税金がかかります。課税対象になる手当は、残業手当・休日出勤手当・条件付き職務・役職手当・住宅手当などです。
しかし、以下のように非課税となる例外もあります。
手当
役員や使用人に支給する手当は、原則として給与所得となります。具体的には、残業手当や休日出勤手当、職務手当等のほか、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当なども給与所得となります。
しかし、例外として、次のような手当は非課税となります。
(1) 通勤手当のうち、一定金額以下のもの
(2) 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
(3) 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの
国税庁「No.2508 給与所得となるもの」
通勤手当は1か月あたりの非課税限度額が移動手段や通勤距離によって設定されているため、給与明細の項目を確認してみましょう。非課税限度額を超えていれば、課税項目へ超過分の通勤手当が記載されているはずです。
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労働基準法で支給が定められている手当3種類
手当には法律で定められている手当と任意の手当があることがわかりました。ここからは、労働基準法で支給が定められている手当を解説します。法律で定められた手当は、以下の3種類です。
法律で定められた手当:
- 時間外手当・残業手当
- 休日手当
- 深夜労働手当
上記3つの手当が支給されていない場合、違法の可能性が高くなります。労働についての規制は、労働基準法によって詳細に規定されているからです。
また、会社の就業規則によって別途定められている規定もあるため、労働基準法と就業規則の双方を確認しなければなりません。それぞれ詳しくみていきましょう。
法律で定められた手当の種類①:時間外手当・残業手当
法律で定められた手当の1つ目は、時間外手当・残業手当です。労働基準法第36条には、時間外および休日の労働について明記されています。
会社が法定労働時間を超えて労働を命じる場合、労使協定を締結して労働基準監督署に届出を提出しなければなりません。この労使協定は、通称36(サブロク)協定と呼ばれています。
労働基準法によって定められた労働時間は、休憩時間を除いて1日8時間・1週間40時間までです。労働基準法第37条には、法定労働時間を超えた場合の時間外労働として発生する残業手当割増賃金比率について記載されています。
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
e-Gov「労働基準法」
なお、36協定を締結した会社員が月60時間を超える時間外労働を行なうと残業代支払い割増率は50%以上になります。
法律で定められた手当の種類②:休日手当
法律で定められた手当の2つ目は、休日手当です。労働基準法では、以下のように週1回または4週間に4回の法定休日が定められています。
休日労働とは、労働基準法で定められた法定休日(週1日又は4週を通じて4日。曜日は問いません。)に労働させることをいいます。休日労働に対する割増賃金は、通常の賃金の3割5分以上です。
厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」
休日に勤務した場合には休日労働に該当し、基礎賃金の35%以上増の割増賃金となります。休日かつ深夜に勤務した場合には、基礎賃金の35%増の休日割増+深夜割増25%以上の合計額が支給されることになります。
法律で定められた手当の種類③:深夜労働手当
法律で定められた手当の3つ目は、深夜労働手当です。深夜労働は、原則22時〜5時までの時間帯を指します。労働基準法第37条4項には、深夜労働した場合、25%以上の割増賃金が発生する旨が明記されています。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
e-Gov「労働基準法」
深夜労働に加えて、さらに時間外労働や休日労働となった場合には両方の手当が合算された割増率となります。割増賃金の支給は労働基準法により定められているため、会社員は割増賃金の請求を行なう権利があることを覚えておきましょう。
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会社で任意に設けている独自の手当13種類
法律で定められている手当に対して、会社任意の手当にはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、会社で任意に設けている独自の手当について、以下の13種類をご紹介します。
会社独自の手当の種類:
- 役職手当(職能手当・職務手当)
- 資格手当
- 住宅手当
- 通勤手当
- 家族手当・扶養手当
- 地域手当
- 単身赴任手当
- 海外赴任手当
- 特殊作業手当・特殊勤務手当
- 出張手当
- 皆勤手当
- 食事手当
- ライフプラン手当
手当の内容は、会社によって異なります。ここでは一般的な手当を抜粋しているため、あなたの会社にある手は就業規則または給与規定で確認してみましょう。
会社独自の手当の種類①:役職手当(職能手当・職務手当)
会社独自の手当の種類の1番目は、役職手当(職能手当・職務手当)です。役職手当は職位や業務上の役割に対して支給され、会社によっては管理職手当や役付手当とも呼ばれます。
職能手当・職務手当は、業務で求められる技術や責任の対価に対して支給されます。会社が任意で支給要件を設定できるため、たとえ同じ役職でも業界によって支給有無・手当金額に大きな違いがあるかもしれません。
会社独自の手当の種類②:資格手当
会社独自の手当の種類の2番目は、資格手当です。資格手当は、業務に活かせる資格を新たに取得した会社員、またはすでに資格を保有している会社員に支給されます。国家資格・公的資格・民間資格のどの資格が対象なのかは、会社によって異なります。
また、毎月の給与に加算されるのか、一時金として支払われるのか。無期限あるいは期限付き支給なのかといった点の違いもあるため、会社規定をよく確認しましょう。
会社独自の手当の種類③:住宅手当
会社独自の手当の種類の3番目は、住宅手当です。住宅手当は会社員の住宅に関連する補助・手当を支給する福利厚生制度です。住宅手当も含め、住宅関連の補助には家賃補助・社員寮・社宅・引越し手当があります。
しかし、住宅手当や社員寮・社宅は規模縮小・廃止傾向です。令和2年の厚生労働省調査によると、住宅手当を支給する企業割合は全体の47.2%にとどまりました。
会社独自の手当の種類④:通勤手当
会社独自の手当の種類の4番目は、通勤手当です。通勤手当とは、会社員の自宅から会社までの通勤にかかる費用を支給するものです。
電車・バスなどの公共交通機関運賃や自家用車のガソリン代が通勤手当の支給対象にあたります。通勤手当のうち一定金額以下のものは非課税とされていますが、労働基準法によって会社が支給する義務はありません。
会社独自の手当の種類⑤:家族手当・扶養手当
会社独自の手当の種類の5番目は、家族手当・扶養手当です。家族手当とは、配偶者や子どもなどの家族がいる会社員に対して会社が支給する手当で、対象条件は各会社によって異なります。
また、家族手当と扶養手当との違いは、扶養の有無です。扶養手当は、扶養している家族がいる場合に限り、支給されると認識しておきましょう。
関連記事:子供の扶養はどっちにつける?支払う税金をお得にする方法を徹底解説
会社独自の手当の種類⑥:地域手当
会社独自の手当の種類の6番目は、地域手当です。地域手当は、勤務地による支出差を補うために支給されます。主な地域手当は、以下の3つです。
主な地域手当:
- 物価が高い都市部における生活費軽減のための都市手当
- 離島や山間部などの不便な地域における負担軽減のための特地勤務手当
- 寒冷地方における暖房費軽減のための寒冷手当
地域手当は住んでいる場所ではなく、勤務地が基準になります。
会社独自の手当の種類⑦:単身赴任手当
会社独自の手当の種類の7番目は、単身赴任手当です。単身赴任手当は、家族と離れて1人暮らしをする必要のある会社員に支給されます。
生活の拠点が2か所になることで、余分にかかる生活費の負担を軽減することが目的です。しかし、会社によって支給有無・支給条件・支給額は異なるため、就業規則を確認する必要があります。
会社独自の手当の種類⑧:海外赴任手当
会社独自の手当の種類の8番目は、海外赴任手当です。海外赴任手当とは、海外赴任となった会社員にモチベーションを増幅または維持させるための手当です。
異なる環境で仕事や生活することは強いストレスを感じたり、余分な経済的負担を強いられたりします。しかし、海外勤務を経験した社員を育成することは会社にとって重要であるため、多くの会社で設けられている手当です。
会社独自の手当の種類⑨:特殊作業手当・特殊勤務手当
会社独自の手当の種類の9番目は、特殊作業手当・特殊勤務手当です。特殊作業手当は、危険・有害業務など特殊な作業環境にある会社員に対して支給されます。
また、特殊勤務手当は一般的な労働者と異なる交代制勤務などの特殊勤務を行なう会社員に対して支給されます。具体的な職業は、放射線の除染作業・爆発物の処理業務・看護師や医師の夜間救急医療業務などです。
会社独自の手当の種類⑩:出張手当
会社独自の手当の種類の10番目は、出張手当です。出張手当は、会社員が通常勤務地とは異なる場所に出張した場合に支給されます。
支給目的は、出張によって生じる交通費・宿泊費・食費などの雑費補てんや会社員へのねぎらいです。ほとんどの会社で出張手当は支給されますが、金額に法的な規定はないため各会社によって支給額や支給条件は異なります。
会社独自の手当の種類⑪:皆勤手当
会社独自の手当の種類の11番目は、皆勤手当です。皆勤手当は、一定期間の間に1度も欠勤することなく勤務した場合に支給されます。
たとえ有給休暇を取得したとしても、基本的に皆勤手当はもらえるので安心してください。欠勤がないものの遅刻・早退がある、または月の途中で退職したなどの取り扱いについては会社によって異なります。
会社独自の手当の種類⑫:食事手当
会社独自の手当の種類の12番目は、食事手当です。食事手当とは、会社が就業時の飲食費用を負担する手当です。
支給方法は、社員食堂・仕出し弁当・チケットサービス・現金支給など会社によって異なります。会社員の食生活改善につながるだけでなく、すべての会社員が平等に受けられる手当のため人気の福利厚生です。
会社独自の手当の種類⑬:ライフプラン手当
会社独自の手当の種類の13番目は、ライフプラン手当です。ライフプラン手当は老後の資産形成を支援する制度で、LP手当・選択制企業型DC(確定拠出年金)とも呼ばれます。
ライフプラン手当が導入されている会社では、給料の一部を選択制企業型DCに拠出できます。税金と社会保険料の負担を軽減できることに加え、運用益非課税・年金受取時の税負担軽減といったメリットも見逃せません。
まとめ:あなたの会社から支給される手当をきちんと理解しよう
会社員全員が平等に活用できる福利厚生に対して、手当は支給条件に該当する会社員のみが利用可能です。会社の手当は、法定手当と任意手当、課税対象と非課税対象の手当に分類できます。
任意支給の手当の種類はさまざまで、会社によって支給条件や金額は異なります。会社の方向性を取り入れられる任意支給の手当は、職場環境の実情に見合ったものが時代の流れによって見直されていくでしょう。
どのような手当があるのか就業規則で確認し、支給される手当をきちんと理解してあなたの資産づくりに役立てましょう。